アオハル。 (ページ1)

今日:15 hit、昨日:20 hit、合計:15,165 hit

3年Ｅ組大橋和也ページ1

.

.

中学1年の春。

仲の良かった友達とクラスが離れて、なかなか新しい友達が作れずにいた私。

他校だった女子が、なんだか大人っぽく見えて、恥ずかしくて話しかけられなくて……少し、クラスで浮いていたかもしれない。

和「あれっ？ない！」

『はっすん、はよ行くでー！』

和「あ～～…あとで行く！先行っといて！」

あれ～？なんて言いながら、ガサゴソ鞄を漁る斜め後ろの席の男子を、ちらりと見る。

……お弁当、忘れたのかな？

一応、ラインナップは少ないながらも購買があるからそこで何か買えば大丈夫かな、と思っていると

彼もそう考えたようで、慌てて財布を取り出して、中身を見て頭を抱えてる。

…お金もないんだ。

「…、」

ぐぅ…とお腹がなって大きなため息をつく彼と、自分のお弁当を交互に見る。

お昼を諦めたのか、大人しく席に着いた彼は、友達の元にも行くのを辞めたみたいだった。

だから……

「…あの、」

和「へ？」

「一緒にごはん…食べますか？」

ぱちぱちと大きく瞬きをする彼に見つめられる。

私なりに勇気を出した行動だった。断られたらちょっと…へこむ。

和「ええの！？」

「えっ？」

和「助かるわ、めっちゃお腹空いてたんよ～」

すごい勢いで机をガシャーン！ってくっつけてきて、真正面に座る。

私のお弁当を覗き込んで、うわぁっ！って目をキラキラさせた。

和「めっちゃ美味しそうやな！」

「あ、ありがとう」

和「お母さん、料理得意なん？」

「あ、いやウチ共働きだから、お弁当は自分で…」

和「え！？自分で作ってんの？すごー！」

コロコロ変わる表情に、少しびっくりしてしまう。

けど、褒められたことは素直に嬉しくて、自然と頬が緩んだ。

「どれでも、好きなの食べていいよ」

和「えー迷うなぁ…じゃあ、里芋！」

「うん、どうぞ。味は保証できんけど」

冷食のものもたくさん入ってたけど、里芋の煮っころがしは、昨晩作った夕食の余りだった。

お箸で摘まれた里芋を、つい目で追ってしまう。

…どうかな、美味しいかな。

和「…っ！めっちゃうまぁ！」

「！よかった…」

和「料理上手なんやね、Aちゃん」

「えっ、」

太陽みたいな笑顔で、名前を呼ばれて、またびっくりする。

喋ったことないのに、名前…覚えててくれたんだ。

.

.

それが、大橋くんとの出会いだった。