【伍】 ページ10
「鬼狩りが、姉さんの狩場にまで…！みんな何してるんだよ！」
その鬼はとても動揺しているようで、動きに一貫性がない。蜘蛛の巣のように広がるその網を避けるのはそう難しくはなかった。
Aはひらりひらりと最低限の動きでかわしながら一気に距離を詰めると、その白い薙刀を振り上げる。
ゴトリ
鬼は何が起きたのか分からなかった。白い一閃が視界の端を掠めたと思ったら、地面に近い場所から倒れこむ己の体を見つめていたのだ。
「ぁ、え…？」
『情報ありがとう。もういいわ。』
「じょうほう…？」
鬼は知る由もないが、Aの階級は甲。それも柱となるまで平均2年かかると言われる鬼殺隊において、僅か1年足らずで甲までかけ上がった秀才である。その実力は柱に勝るとも劣らないと言われている。
鬼が視線を上へ向けると、そこには感情の浮かばない静かな瞳で見下ろすA。ヒュッと薙刀を一振りして付着した血を飛ばし、柄で地面を突くように持ち変えると、彼女の頭のすぐ上あたりで白刃がキラリと月光を反射した。日本刀よりもしなりが強いその刃は、その色も相まってまるでそれ自体が眉月のようだ。
『"姉さん"という呼称から"兄弟"か"家族"のような共同体を作っていることは予想できたわ。餌場を共有するくらいだもの、仲良しなのね。"みんな"とも言っていたから、少なくとも君と"姉"を含めて3体以上……いえ、"彼奴ら"でもなかったから4体以上の可能性も高いわね。さっきの動揺した様子からはとても君が十二鬼月とは思えないし、ならその"姉"が十二鬼月なのかしら？
それにしても"姉"の術が繭玉、弟は粘着性の蜘蛛の巣……どちらも蜘蛛のような術だけど、よく似た能力の鬼がたまたま集まるなんてことあるの？まるで誰かが意図的に集めたみたい。
……まだ情報が少ないけど、君からまともな答えが帰ってくるとは思えないし、もういいわ。さようなら。』
動揺と恐怖でいっぱいの相手からの聴取は時間がかかりすぎて効率的ではない。幸いこの山には他にも複数の鬼がいるようなので、そちらを当たってみるべきだろう。
Aは薙刀を背中の鞘に戻すと、体が崩れ始めた鬼を気にする素振りもなく、足早にその場を後にした。
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MONACA - かわいい (2019年11月19日 21時) (
レス) id: 8230194393 (このIDを非表示/違反報告)
愛花 - とっても面白いです！時透君が可愛い！更新頑張ってください！待ってます！ (2019年8月18日 22時) (レス) id: 5d74a38634 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：白雪 | 作成日時：2019年8月4日 18時
