【参】 ページ8
『ここが那田蜘蛛山……鬱蒼としてて、如何にも鬼が好みそうな感じね。』
無一郎と別れてから約半日。Aは目的地である那田蜘蛛山に到着した。高い木々が鬱蒼と立ち並ぶその山は、さぞ昼間でも日の射す場所が少ないのだろう。鬼が潜むにはうってつけだ。
『今日、今年入隊した癸が新たに3人派遣されたらしいけど、本来なら癸3人程度で状況が変わるとは思えない……それだけ有望な剣士ってこと？』
山への入口を前に考えを巡らせるが結論はでない。とにかく今は目の前の任務に集中すべきだと気持ちを切り替えて一歩踏み出したその時、暫くどこかへ消えていた真朱が現れて頭上を旋回しだした。
「伝達！那田蜘蛛山ニ十二鬼月ガイル可能性アリ！新タニ柱2名ノ派遣ガ決定シタヨ！」
『十二鬼月…！？』
その単語にAの心臓がドクリと大きく跳ねた。息が浅くなり、手足が微かに震えだす。
これまで一度たりとも遭遇することのなかった十二鬼月がここいいる。今の自分に倒せるか？いや出来るかじゃない、これは千載一遇の機会だ。今日こそ十二鬼月を倒してやるやっと機会が巡ってきたんだそうすれば私もあの人みたいにきっときっときっときっと＿＿＿
＿＿＿＿＿そんなの今更でしょう？
『……っ』
酷く冷静な自分の声が聞こえた気がした。急激な感情の昂りを押し止めようとする、僅かな理性の声だ。
Aは目を伏せて大きく拍動する胸に手を当て、乱れた呼吸を整えた。まさか十二鬼月の名を聞いただけでここまで自分が動揺するとは思わなかった。
動揺すれば剣が鈍る。勝負とは冷静を欠いた方が負けるのだ。
自分に言い聞かせるように念じながら、暫くそのまま深呼吸を繰り返す。最後にふぅと一つ息を吐いてようやく目を開けると、いつの間にか肩に止まっていた真朱が心配そうに顔を覗きこんでいることに気がついた。安心させるように小さく微笑みかけながらその嘴を指先で優しく撫でてやる。
『(そう、今更でしょう。今更十二鬼月を倒したところで私の立場は変わらない。ならばただ任務に集中して目の前の鬼を滅するだけ。)……もう大丈夫。行ってくるわね、真朱！』
「カァ！」
安心したのか大きく一鳴きして飛び立つ真朱を振り返らず、那田蜘蛛山の入口へ勢いよく駆け出した。その目に先ほどの揺らぎは微塵も感じられない。
大丈夫、何が相手でも頑張れる。だって私は、あの可愛い霞柱様の継子なんだから！
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 85人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
MONACA - かわいい (2019年11月19日 21時) (
レス) id: 8230194393 (このIDを非表示/違反報告)
愛花 - とっても面白いです！時透君が可愛い！更新頑張ってください！待ってます！ (2019年8月18日 22時) (レス) id: 5d74a38634 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：白雪 | 作成日時：2019年8月4日 18時
