【弐】 ページ7
『ちゃんとご飯食べてくださいね。お米の炊き方ならカァ子さんに教え込んでますから、分からなければ聞いてください。おかずは近所のお惣菜屋さんで買えますからね。あ、身拭いの場所は分かりますか？暖かいからといってお風呂上がりに薄着で過ごしちゃダメですよ。それから…「ねぇ君は俺のお母さんなの？」
無一郎はうんざりとした表情を隠しもせず、止まる気配のないAの言葉を遮った。早朝に藤の家を出て数刻、別れ道に差し掛かる今まで延々と聞かされているのだからいい加減鬱陶しい。
「今までも別々の任務につくことはあったでしょ。子供じゃないんだから数日くらい平気だよ。」
『だって時透さん、何度言っても覚えないじゃないですか。お米炊こうとして火にかけたまま鍛練に夢中になって忘れたの、まだ覚えてますからね。』
「一年以上前のことをいつまでネチネチ引きずってるの。もう平気だって言ってるだろ。鬱陶しいな。」
『うっと…。』
絶句するA。
対する無一郎は非常に苛立っていた。Aは基本的に目上への礼節を忘れない真面目な少女だが、時たま実家の弟妹に接するような態度を無一郎にもとるのだ。その年上ぶった態度が無一郎にとっては癪に障るものであったし、更に言えば無一郎よりいくらか身長が高いAが少し腰を曲げて覗きこむように話すのが余計に子供扱いされているように感じさせてイライラする。
「さっさと行きなよ。一刻を争う状況かもしれないのに、どれだけ時間を無駄にするつもりなの？」
『……わかりました。行ってきます。』
くるりと無一郎に背を向け、任務地への道を一人トボトボと歩き出したA。その背中からはなんとも言えない哀愁が漂っている。
無一郎はしばらくその背中を見つめていたが、徐にハァと小さく溜め息を吐いた。
「さっさと片付けてきなよ、A。僕、明日はふろふき大根が食べたい。」
その言葉にAがパッと振り向くと、そこにはプイッとそっぽを向いた無一郎。顔はいつもの無表情だが、今のは無一郎なりの激励だったのか。
ああそんな…なんて、なんてなんてなんて＿＿＿＿可愛らしいのだろう！！
Aは初々しい仕草に思いきり頬を緩ませた。その顔を見て無一郎は、先ほどの言動が自らの首を絞めたことを悟ったのだった。
『はい！すぐ帰って大鍋一杯作りますね！』
「うるさいバカ消えて二人で食べきれる量にしなよ。」
甘い卵焼きも作らせてやる。無一郎はそう静かに決意を固めた。
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MONACA - かわいい (2019年11月19日 21時) (
レス) id: 8230194393 (このIDを非表示/違反報告)
愛花 - とっても面白いです！時透君が可愛い！更新頑張ってください！待ってます！ (2019年8月18日 22時) (レス) id: 5d74a38634 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：白雪 | 作成日時：2019年8月4日 18時
