変わらぬ日々におはよう ページ4
花菱Aの朝は早い。
まだ日も昇らぬ内から起き出しては、まずは自室で一通りの筋トレと柔軟、次に庭に出て素振りをし、広い邸宅の外周を10週程度走り込む。
朝の鍛練が終われば風呂で軽く汗を流し、朝食作りに取りかかる。今日の献立は鯵の干物と甘い卵焼き、豆腐と若布のシンプルな味噌汁。昨夜の残りの筑前煮も小鉢によそって、炊きたての白米を茶碗いっぱいに盛り付ける。それらを二人分、四角い座卓に運んで準備完了だ。一仕事終えた満足感によしと一つ頷くと、Aは食卓のある居間を出て邸宅の奥にある一番大きな部屋へ向かった。
特に断りも入れず室内へ入るとそこは無人だった。必要最低限の家具のみが並ぶ室内は無機質な印象を受けるが、しわくちゃに乱れた布団と軽く丸められただけの浴衣だけが妙に生活感を醸し出していた。
Aは明らかに他人が生活しているだろうその室内へ一切の躊躇もなく足を踏み入れると、縁側へ続く奥の障子を丁寧に開け放ち、そこにいた人物へ柔らかな笑みを向ける。
『お早う御座います、時透さん。』
「…おはよう。」
広い中庭ではすでに隊服を着込んだ無一郎が木刀を片手に素振りを行っていた。Aの呼び掛けに振り返ると、木刀を振る手を下ろして縁側へと近づいてくる。
『お疲れさまです。朝ご飯できてますよ。』
「うん。」
『今日の卵焼きはいい感じにふっくら焼けたんですよ。』
「…そう。」
少し声の調子が上がった気がする。Aは内心ガッツポーズを決めた。
Aが継子となった2年前から、ふっくら甘い卵焼きはふろふき大根に並ぶ無一郎の大好物だ。卵焼きを食べる時はいつもの無表情からほんの少し眦が下がるのがとても嬉しくて、つい頻繁に献立に上ってしまうのだ。まぁ"朝食の定番"ということで許してほしい。
縁側から自室に上がった無一郎が木刀をしまって軽く服装の乱れを直す間に、Aは素早く布団を畳んで脇へ寄せ、丸められた無一郎の寝巻きの浴衣を手に取った。
『洗濯物はこれだけですね。今日は天気がいいので布団も干しましょう。後で取りに伺います。』
「わかった。」
そうして連れだって先ほどの居間へと歩き出すのだった。
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MONACA - かわいい (2019年11月19日 21時) (
レス) id: 8230194393 (このIDを非表示/違反報告)
愛花 - とっても面白いです！時透君が可愛い！更新頑張ってください！待ってます！ (2019年8月18日 22時) (レス) id: 5d74a38634 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：白雪 | 作成日時：2019年8月4日 18時
