【弐】 ページ3
無一郎は大人しく紙面に目を滑らせ、僅かに眉をひそめた。
この時、無一郎は内心とても困っていた。だって、どうでもいいのだ。
継子を付けるなど面倒だと思うが、事実、自分一人で生活していける自信もない。何より敬愛するお館様の好意を踏みにじることなど到底できるはずもなかった。
だが文字だけで人となりを掴めるわけもなく、そもそも興味の無いものを何を基準に選べばいいのかが全く分からない。素直に助けを求めようにも、無一郎が目で訴えても産屋敷はにこにこと笑みを浮かべるのみで何も言うことはない。
助け船は期待できないと悟った無一郎は仕方なくもう一度紙面へと視線を戻した。
強さは階級から見てもほぼ同等。実績は千差万別ながら、みな乙以上というだけあって実力は申し分ないようだ。そうなると残るは＿＿。
「じゃあこの子にします。」
「おや、決まったかい？」
「花菱A様です。」
無一郎が指差した人物の名前を、産屋敷の後ろに控えていた双子の片方が素早く読み上げる。その名を聞いた産屋敷はすぐに嬉しそうに目を細めて笑った。
「そうか、Aか。Aは優しくてとてもしっかりした子だからね。きっと無一郎も仲良くなれるよ。」
「仲良く…。」
正直、誰が継子となっても仲良くする必要性が感じられない。自分が生活するには確かに必要な存在で、相手も柱から直接指導を受けられるという利点がある。互いに得のある、相互補助の関係であれば十分だろう。
何はともあれ、これで継子の問題は解決だ。もし気に入らない人間であったなら、即別の候補者へ変更すればいいだけのこと。
選ばれた当人へは産屋敷から話をするとの言葉に素直に甘えることにして、無一郎は紙束を纏めて産屋敷の方へ差し出した。
それから二言三言交わして、産屋敷は退出のために腰を上げた。しかし双子を従えて静かに襖を潜ろうとしたところでふと足を止めて無一郎を振り返る。
「そういえばどうしてAを選んだんだい？どう選ぶか随分悩んでいたようだけれど。」
やはり気付かれていたか。
無一郎は別に、と珍しく言葉を濁らせた。
「特別な理由があったというわけではありません。ただ＿＿＿
…………名前が、綺麗だったので。」
そう、始まりはそんな何気無い理由だったのだ。
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MONACA - かわいい (2019年11月19日 21時) (
レス) id: 8230194393 (このIDを非表示/違反報告)
愛花 - とっても面白いです！時透君が可愛い！更新頑張ってください！待ってます！ (2019年8月18日 22時) (レス) id: 5d74a38634 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：白雪 | 作成日時：2019年8月4日 18時
