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「Aさん」
『鬼灯!視察中にごめんね。』
暫く桃太郎をからかいつつ待っていると、茄子に手を引かれて一人の鬼がやったきた。
鋭いつり目に1本角、黒い着物を纏い、その背には逆さ鬼灯__泣く子も更に泣きわめく地獄の第一補佐官、鬼灯だ。
鬼灯は茄子の手を離れると、真っ直ぐAの前へ歩みよった。
「戻られてたんですね。4日振り、でしょうか。」
『そうだね。でもすぐにもう一度阿鼻へ行かないといけないんだ。ちょっとトラブルが起きてるらしくてね。』
そう言ってAが先ほど閻魔殿で預かった書類をペラリと翳してみせると、鬼灯はその文面にさっと目を滑らせて思い切り眉をひそめた。
「このくらい自分たちで対処できないのですか。なんのための政令指定地獄だと…」
『鬼灯、それもう言ったよ。仕方ないからもう一度行って対処してくるよ。…ついでに能無し共の指導も。』
「是非そうしてください。彼らは貴女が優秀だからと甘えすぎです。そのせいで私がどれ程我慢を強いられているか…。」
鬼灯の手がそっとAの白い頬へ添えられる。するとAも嬉しそうにはにかみながらその手に自身の手を重ねた。
『…寂しいの?』
「当たり前でしょう。いえ、寂しいというよりただAさんが不足しています。本来なら1週間の半分はこちらに戻るはずなのに…。」
『全て予定通りにはいかない仕事なのは分かってたでしょう?それに昔に比べれば大分通いやすくはなったよ。』
「それはそうですが。」
駄々をこねる子供と母親のような会話だが、顔を寄せて言葉を交わす二人はどう見ても恋人同士そのものだ。
そんな二人の様子に、まだ職場の内情に詳しくない唐瓜は首を傾げた。しかし真面目で空気を読める彼の性格上、上司のプライバシーに踏み込む質問は憚られる。
このなんともいえない空気をどうするべきか……思考を巡らせる唐瓜だったが、そんな上司部下の気遣いになど縛られない、ある意味救世主がこの場にはいた。
「おいぃぃ!!いつまで俺を無視するんだよォォォ!!!」
「「「あ、そう言えば…。」」」
この場に集まった原因を忘れていた。
ごめん、わざとじゃないんだよ。
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星の桜(プロフ) - 更新待ってました...!!!有り難う御座います( ;∀;)作者様のペースで!ゆっくりで!待ってます!!! (2019年8月5日 12時) (レス) id: 847ebd8ac8 (このIDを非表示/違反報告)
満月 - 最高でした!何度も読ませて頂いています!7回目ですかね…← まっ、それは置いといて、とっても面白かったです!更新頑張って下さい。応援してます!笑いや、イチャイチャ場面ご馳走様でした!鬼灯様可愛い…!!神作品ですね…文才寄越せ下さi(殴 (2018年8月28日 2時) (レス) id: d83bdf162b (このIDを非表示/違反報告)
あーみ(プロフ) - 面白くて何回も読ませてもらってます!更新楽しみにしてます♪がんばってください(≧▽≦) (2018年8月13日 9時) (レス) id: eacb75658f (このIDを非表示/違反報告)
かりん糖(笑) - 面白い!更新応援してます! (2018年5月26日 13時) (レス) id: 9e16e8366e (このIDを非表示/違反報告)
男にならざる物(プロフ) - 初めまして今日はじめて読ませていただいたのですがとても面白いですね。最近アニメを見始めてにわかですが楽しみに夢小説を楽しみにさせて頂いておりますそして気長に更新を待たせていだだきますこれからも頑張って更新して頂けると私も嬉しいです! (2018年5月14日 14時) (レス) id: 234f9e8ec0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白雪 | 作成日時:2018年5月13日 20時