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阿鼻地獄は地獄の中でも最下層に位置し、自由落下で2000年かかるほどの深さにある。
昔は獄卒の行き来にも苦労したものだが、現在では機械と妖力が融合した超高速エレベーターが設置され、わずか数分での移動が可能となっていた。
全くいい時代になったものだ…。
自国の技術力の進歩を噛みしめつつ、Aは受け取った書類に目を通しながらそのエレベーターが設置されている地獄門の近くへ向かっていた。
「だからよぉ!ここで一番強い奴連れてこいっつってんの!!」
『ん?』
しかしその耳に届いた喧騒。
また新たな面倒事の気配に見ない振りもできず、仕方なく進路を変更して騒ぎの元へ向かうと、そこで見たのは__。
「そういうことはまず受付を…」
「そういうことしか言えないのか、このマニュアル獄卒!」
『………………うわあ。』
桃色の着物に背中の旗、お供に連れた動物達。全身で桃を主張する、日本で最も有名なお伽噺の英雄がそこにはいた。
獄卒相手に巻き舌で詰め寄るその姿はどう見ても道場破りかクレーマーだが。
『絵面だけなら絵本のワンシーンみたいだな。とりあえず写真撮ろう。』
「あ、A様!ちょうど良かった!こいつ何とかしていただけませんか!?」
珍しい光景に少しワクワクしてしまったAだったが、獄卒の一人に気付かれたことで一気にその場の視線を集めることになった。
「お、そいつ上官か?ということは鬼の大将だな!」
なんか妙なテンションで絡まれた。
こうなれば本格的に対処するしかない。とりあえずAは人当たりのいい笑顔でその人物に近付いた。
『桃太郎君、だね。確かに私は彼らの上司にあたるが、残念ながら鬼ではないんだ。なんとなく察してはいるけど、天国の住人が地獄へ何の用かな?』
「あ?なんだ、鬼じゃないのか。ならあんたに用はない!俺は鬼を退治しに来たんだよ!」
『ああ、やっぱり…。』
分かってた。全身で主張してるもんね。
『(これはずるずる長引かせるより、さっさと要望を叶えてあげた方がいいかな。)
茄子君、この近くに鬼灯が来ているはずなんだ。ちょっと連れてきてくれるかな。』
「あ、はいっ」
近くにいた新卒に迎えを頼む。
等活地獄はすぐそこだし、すぐに連れてきてくれるだろう。
「A様、よろしいんですか?簡単に要求飲んじゃって。」
『いちいち説き伏せるのも面倒だからね。手っ取り早く当たって砕けてお引き取り願おう。』
「ひ、ヒソヒソするな!!」
ごめんね、わざとだよ。
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星の桜(プロフ) - 更新待ってました...!!!有り難う御座います( ;∀;)作者様のペースで!ゆっくりで!待ってます!!! (2019年8月5日 12時) (レス) id: 847ebd8ac8 (このIDを非表示/違反報告)
満月 - 最高でした!何度も読ませて頂いています!7回目ですかね…← まっ、それは置いといて、とっても面白かったです!更新頑張って下さい。応援してます!笑いや、イチャイチャ場面ご馳走様でした!鬼灯様可愛い…!!神作品ですね…文才寄越せ下さi(殴 (2018年8月28日 2時) (レス) id: d83bdf162b (このIDを非表示/違反報告)
あーみ(プロフ) - 面白くて何回も読ませてもらってます!更新楽しみにしてます♪がんばってください(≧▽≦) (2018年8月13日 9時) (レス) id: eacb75658f (このIDを非表示/違反報告)
かりん糖(笑) - 面白い!更新応援してます! (2018年5月26日 13時) (レス) id: 9e16e8366e (このIDを非表示/違反報告)
男にならざる物(プロフ) - 初めまして今日はじめて読ませていただいたのですがとても面白いですね。最近アニメを見始めてにわかですが楽しみに夢小説を楽しみにさせて頂いておりますそして気長に更新を待たせていだだきますこれからも頑張って更新して頂けると私も嬉しいです! (2018年5月14日 14時) (レス) id: 234f9e8ec0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白雪 | 作成日時:2018年5月13日 20時