*白澤 ページ13
珍しく鬼灯がぼーっとしている。
仕事はしっかりとこなしているが、兎に角とても眠そうだ。
「どうしたの、鬼灯君?」
「昨夜ちょっと徹夜で…。」
『帰って来たの、朝方だったもんね。』
「えー、不眠は肌に良くないよ。ハゲるよ?」
「お前がハゲろ。…あ、これから桃源郷へ行ってきます。」
「ハ…、ハゲるもんか。あ、桃源郷ってことは白澤君に会うんでしょ?あのこ、君に似てるよね。顔つきもだけど小賢しい所とか。」
「…それ、よく言われますが酷く屈辱です。」
思い切り嫌そうに顔を歪める鬼灯。眠たげな目付きも相俟ってすごい人相になっている。
『そんなに似てます?顔についてはあまりそう思ったことはないんですけど…。』
「え、そうなの?ワシも今はそうでもないけど、最初はやっぱり似てるなって思ったよ。親戚って言われたら疑わないレベル。」
「Aさんは昔から私の顔を見慣れているからかもしれませんね。……でもそう言ってくださるのは嬉しいです。」
『ああ、それはあるかも。誰と比べても、私には鬼灯が一番素敵に見えるからね。』
「Aさん…。」
「……あの、…ここで二人の世界に入るのはやめてくれないかな…。」
見つめあう部下夫婦に居心地悪そうな閻魔大王が恐る恐る声をかけると、鬼灯はチッと思い切り舌打ちをして、Aに「いってきます」と声をかけてからクルリと法廷の入口へ向かった。
出ていく直前、Aはその背中へ声をかける。
『鬼灯、あまり無理しないように。』
「………はい。」
チラリと一瞬こちらを振り返り、鬼灯はそのまま閻魔殿を出ていった。
Aは特に気にすることなく元の仕事に戻ったが、閻魔大王は最後の会話が気になったらしい。
「Aちゃん、無理するなってどういうこと?やりすぎるな、じゃなくて?」
『鬼灯はやると決めたら徹底的ですから。詳しくは知りませんが、きっと昨日の徹夜も白澤様への嫌がらせの準備のためでしょう。…そんなことよりもっと自分の体を労ってほしいんですけど。』
「なるほどね…。まぁそこはAちゃんが見ててあげてよ。鬼灯君にはそれが何よりの労いだろうからさ。」
『……ふふ。はい、そうですね。』
「でも確かにあの二人はもう少しなんとかならないものかな。性根の似た者同士って異様に仲悪いんだよなぁ…。」
『同族嫌悪ですね。本人達は絶対認めないと思いますが。』
クスクスと可笑しそうに笑うA。
そうしてその日の閻魔殿には珍しくも平和な時間が過ぎていった。
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星の桜(プロフ) - 更新待ってました...!!!有り難う御座います( ;∀;)作者様のペースで!ゆっくりで!待ってます!!! (2019年8月5日 12時) (レス) id: 847ebd8ac8 (このIDを非表示/違反報告)
満月 - 最高でした!何度も読ませて頂いています!7回目ですかね…← まっ、それは置いといて、とっても面白かったです!更新頑張って下さい。応援してます!笑いや、イチャイチャ場面ご馳走様でした!鬼灯様可愛い…!!神作品ですね…文才寄越せ下さi(殴 (2018年8月28日 2時) (レス) id: d83bdf162b (このIDを非表示/違反報告)
あーみ(プロフ) - 面白くて何回も読ませてもらってます!更新楽しみにしてます♪がんばってください(≧▽≦) (2018年8月13日 9時) (レス) id: eacb75658f (このIDを非表示/違反報告)
かりん糖(笑) - 面白い!更新応援してます! (2018年5月26日 13時) (レス) id: 9e16e8366e (このIDを非表示/違反報告)
男にならざる物(プロフ) - 初めまして今日はじめて読ませていただいたのですがとても面白いですね。最近アニメを見始めてにわかですが楽しみに夢小説を楽しみにさせて頂いておりますそして気長に更新を待たせていだだきますこれからも頑張って更新して頂けると私も嬉しいです! (2018年5月14日 14時) (レス) id: 234f9e8ec0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白雪 | 作成日時:2018年5月13日 20時