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佰肆拾玖話 同じ ページ3






「話は終わったかよォ」


苛立たし気に、不死川さんが声を上げた。早く無惨を斬ってやりたい。そう顔に現れていた。確かに、ここで雑談をしている暇はない。今は戦闘の真っ只中だ。
それでも俺は、一言口にする為に苛つくこの人に向き合った。


「…俺、少し気絶してたんで伝令をきいてなかったんですよね。だからさっきのは…」

「その先を言ったら殺す」


…その先っていうか、今すぐにでも殺しそうだけど。

なんて心の中で思いながら、大人しく口を噤む。これ以上何か言えば、不死川さんの顔は殺人鬼になってしまう。


「テメェも俺と同じだから分かるだろ。…癪だがなァ」

「……同じって…別に、」

「はっ、酷ぇ顔して何言ってんだ。剥がれてんだよ、化けの皮が」


不死川さんは勝ち誇った様に鼻で笑う。それが少し気に食わなかったが、文句を言う前に移動の号令がかけられる。俺はまた、口を噤むしかなかった。

悲鳴嶼さんを先頭に移動。雑魚鬼はその都度個々で対処、今はとにかく無惨の元へ急ぐ。それに合意し、いち早く駆け始めた二人の後を追う。最後尾で良かった、と内心安堵した。自分の姿を見られる事に対して気を遣わずに済む。


「(…酷い顔…か)」


不死川さんには、俺が同じに見えるのか。何の冗談だろう。何を言っているんだ。

目元が、赤くなっていた。

泣いた癖に。自分の大切な人の為に泣けた癖に。俺は泣く事が出来なかった。この気持ちが悲しみなのかすら、もうよく分からない。

…ねぇ、知ってますか。不死川さんはきっと嫌な顔をするだろうけど。本当は貴方も、煉獄さんや炭治郎みたいに…


「…っ、」


重心が傾き、倒れそうになった。何とか堪え、前をそっと確認するが気付かれた様子はない。


「(もし、不死川さんが運良く生き残る事が出来たら…)」


俺に喋る力が残っていたら、揶揄い程度にもう一度だけ聞いてみようか。俺が死んだら悲しいですか、と。




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キーウィ(プロフ) - のり弁さん» ありがとうございます!ゆっくりですが更新がんばります!! (2022年12月11日 13時) (レス) id: 7ced2abfb9 (このIDを非表示/違反報告)
のり弁(プロフ) - めちゃめちゃ面白いです!!更新無理なく頑張ってください!楽しみに待ってます!! (2022年10月29日 18時) (レス) @page5 id: 7ca11e8a47 (このIDを非表示/違反報告)
キーウィ(プロフ) - ぷっちんさん» 遅くなりすみません💦ありがとうございます!更新頑張りますねI (2022年8月28日 17時) (レス) id: 7ced2abfb9 (このIDを非表示/違反報告)
ぷっちん(プロフ) - 久々に見直していたらなんだか面白い展開に!更新心待ちにしてました、これからも無理せず更新頑張って下さい!応援してます! (2022年7月16日 15時) (レス) @page3 id: 9b224ffa84 (このIDを非表示/違反報告)
キーウィ(プロフ) - のあさん» 長い間お待たせしてしまいすみません…。そう言っていただき嬉しいです!ペースはゆっくりですが、これからもよろしくお願いします。 (2022年6月26日 14時) (レス) id: 7ced2abfb9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:キーウィ | 作成日時:2021年11月23日 23時

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