〃 ページ7
.
そんな彼女の考えを安易に想像してしまって、にわかに顔が緩む。
何だか心がじわりと暖かくなって、堪らず俺は彼女の頬をするりと撫でた。
俺の指先がその頬に触れると彼女の閉ざされていた口から「ん…」と小さく声が漏れる。
「……あれ、とんち」
「すまん、起こしてもたか」
寝惚け眼擦りながら俺の方へと目を向ける彼女。その瞼はとろんと垂れ下がっていて口からは小さな欠伸が漏れていた。
「今日、遅かったんだね」
「まあ、な」
彼女は「そっかそっか〜」なんて呑気に呟いてから、唸りながら伸びをした。何か食べる？なんてするりとソファを抜け出して冷蔵庫の方へと足を向ける彼女。そんな後ろ姿を眺めながら、いいなあ、なんて思うのはきっと疲れているからだ。うん、きっとそう。だってこんなの俺のキャラじゃないし。
「でも、お前寝てても良かったんやぞ」
「う〜ん、そうなんだけどね、」
そうなんだけどね、なんて繰り返しながら彼女は俺へ近寄る。それから、俺の耳元に手をやってこう囁くのだ。
「だって、私とんちにおはようって一番最初に言いたいし、おやすみって一番最後に言いたいんだもん」
なんかそれって特別な感じしない？ってくふって笑う彼女。なんだか周りがやけに静かに感じた。
きっと俺は疲れてる。きっとそう。
だって、「俺もやで」なんて胸の奥の方がとくりと心地よい気持ちになるのなんて、俺のキャラじゃないし。
.
.
続く
お気に入り登録で更新チェックしよう!
最終更新日から一ヶ月以上経過しています
作品の状態報告にご協力下さい
更新停止している| 完結している
←〃
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 20人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：なるせ。 | 作成日時：2018年7月18日 21時
