五月の蝿【Ren/Sho】 (ページ3)

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「じゃあ今日は解散しよっかー！」

危機一髪のところでその声がかかると平野くんはスっと顔を逸らし幹事の男の子の方へと顔を向けたので、急いで幹事に続き部屋を出る。レジの前で1人で胸をなで下ろしていると、私を誘った子が平野くんの隣でなにか喋っている。

「ねぇ紫耀くん！」

紫耀「ん？なに？」

「紫耀くんの家いきたいなぁ〜」

紫耀「え〜？今日は無理かな〜」

「え〜」

紫耀「いつもだったらいいんだけど今日はちょっとね…」

いつもは連れて帰ってるんだ…とかツッコミつつ、幹事にお金を渡しの外へ出る。

…すると見慣れた細長い姿が見えた。嫌な予感がする。少し近付いて顔を見るとやはり彼だった。漆黒のロングコートにグレーのマフラーを巻き、つまらなさそうにスマホをいじっている彼は白い息を吐きながら入口前のフェンスに寄りかかっていた。

紫耀「Aちゃん送っていこうか？」

続いて店からでてきた平野くんがこちらを覗き込んでくる。しかしそんな場合ではない。

『あっごめん今日は…』

「あ！A！」

『はぁ、もう』

「なぁ〜遅いって！」

"A"という言葉に反応したのか、その薄茶の瞳が私を捉えると私の方へ走ってくる。今日は待っててって言ったはずなのに。

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