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健康は大事に ページ6

「雨の日に外に出ない」

「具合が悪いなら、無理をするな」

「病人のくせに講義に出ようとするな」

「ちゃんと寝てろ」

「飯を食え」

「風呂上がりでもちゃんと髪を乾かせ、自然乾燥にするな」

「…はい」

「待て、なんでそんな事まで知ってるんだ?」

ベッドの上に正座し、2人の説教に近い忠告を受ける。
こうして聞いていると、本当に自分のせいで調子を崩していることを自覚して、尚更申し訳なく思う。

ところでそろそろ足が痺れてきた

「2人とも!Aちゃん病人なんだから」

「休ませなきゃ」と間に割って入った萩原に、心の中で感謝と謝罪を述べながら寝転がる。

「とりあえず、今日は医務室で休んでろよ。
講義のノートなら俺が見せてやるから」

「は、班長〜……助かる……」

班長が優しくて助かった、これで講義のことは一旦安心することが出来る。

にしても風邪をひくなんて。ここ数年無かったから油断していた。

「体が疲れてたんだよ。多分……最近のストレスもあっただろうし」

ベッド横に、視線を合わせるかのようにヒロがしゃがみこむ。
どこか寂しそうなその表情に、「そうかもな」としか返せなかった。

ちゃんと休めてる、そう思っていたがそうじゃなかったみたいだ。

毛布をかぶり直し、天井を仰いだ。

「でも、もうだいぶ落ち着いた。
ずっとクヨクヨしてる方が、先生に怒られてしまうから」

独り言のように、言い聞かせるように口にする。

「…っと、そろそろ講義の時間になる」

頭上の時計に目をやったゼロの言葉で、5人は「行くか」と立ち上がった。

そうか、もうそんな時間なのか。
今日の記憶がほとんど寝てばかりなせいか、いつもより5人といる時間が短く感じて、

心無しか、少し寂しく感じてしまった。

「……Aちゃん」

「何?」

ベッド横で立ち上がったまま、ヒロは気まずそうに笑って、その視線を下に向ける。


「その………手……」

「……!?」


視線を辿るように下げると、ヒロの袖の端を握りしめている手が見えた。

「……悪い、忘れろ」

完全に無意識だった、自分でも驚いて、素早く布団の中に手を引っこめる。

無意識とはいえ、こんなのまるで子供だ。

羞恥心を覚えながら、毛布の裾を思いっきり頭の上まで持ち上げる。
毛布越しにも伝わる視線が余計恥ずかしく思えて。

「はよ行け」

「あ…うん」

「じゃ、またねAちゃん」

「ちゃんと寝ろよー」

扉が閉まる音がして、足音が遠のくまで毛布から顔は出せなかった。




「大好きなのねぇ、お友達のこと」

「だっ………!?
いや……まぁ……そうかも、ですね」

おはよう→←医務室にて



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作者名:しゃ〜け | 作成日時:2022年12月28日 21時

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