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やりたい事 ページ48

「それで?
引き下がらずに啖呵切って、仕事放ったらかしでここに来たって?」

昼過ぎ、突然病室を訪れたAに事の顛末を聞いた萩原は、愉快そうに笑っていた。

「やっちまった……」

Aは座ったまま、壁に頭をつけて項垂れていた。

途中から冷静さを欠いていた。らしくもない。
後悔するようなため息が部屋に響いた。

「ほーんと、松田もAもそっくりだよねぇ

馬鹿さ加減が」

ほくそ笑む萩原の声が、罪悪感にグサリと刺さってさらに項垂れる。

「本当に馬鹿だ……
そもそもあいつの移動は上が止めるだろうし…」

「復帰初日からトラブル抱えてくるなんて…しかも別の課を巻き込んでの大騒ぎ!始末書ものじゃない?」

「嫌すぎる……」

始末書なんて見たくもない。

「にしても、陣平ちゃんも言い過ぎだとは思うけど、Aちゃんはなんでそんなに必死なんだ?」

萩原の疑問に、顔を上げる。
単純な疑問だ。
しかし、Aは言いにくそうに口を閉ざす。

「何か、言いにくい理由?」

「いや、そんなことは無い。だけど……」

伏し目がちに視線を逸らすAに萩原は疑問符を浮かべる。
言葉を探すように、目を泳がせていたが、やがて小さく息をついた。

その脳裏には、先程の松田の言葉が鮮明に聞こえていた。

「嫌…なんだよ。これ以上、大事な友人が死ぬのは」

『死ぬのが怖いとか考えてるやつに、向いてねーよこの仕事!』

ああそうだ。死ぬのは嫌だ。

親しい人が死ぬのは嫌だ。


「たまにな、後悔するんだ。
警察目指さずに、先生の助手をしていれば、先生は死ななかったんじゃないかって。

けれど、過去のことを悔やんだって、どうにもならないだろ?それに、警察になってなきゃ皆とも会えなかったし、萩原の事も助けられなかった。

なら、せめてこのまま、今の友人のこと守りたいんだよ」

皆無茶しかやらないし、と付け加えた。




皆を守るためなら、私がやれることならなんだってやろう。




そのためには自分の事なんて、何も惜しくは無い。





そう、何も惜しくはない。


「……」

「ははは、随分と愛されてるなぁ俺たち

でもそんな心配……Aちゃん…?」

動きをピタリ、と止めたAに、萩原が声をかける。
ゆっくりと顔を上げた彼女は、「そうか」と口にした。

「…そうだ!ありがとう萩原!」

「……どう、致しまして?」


目を開き、いい事でも思いついたかのように礼を告げるAに萩原は奇妙な違和感を覚えた。

「やりたい事がわかったんだ!!」

その言いしれない、まとわりつく様な違和感の正体を知るのは、もう少し後になる。

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作者名:しゃ〜け | 作成日時:2022年12月28日 21時

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