押し問答 ページ45
事件から四日後、捜査二課はまた騒然としていた。
「バカもん!!怪我人は家で大人しくしてろと伝えただろう!!」
「傷の方はご心配なく。医師からも許可を得ていますので……それより、件の爆弾犯についての捜査に私も参加できませんか」
「何を言ってるんだねキミは…!
あの事件は捜査一課の特殊班担当!我々は課が違う!今回の君の怪我も考えると、到底受け入れられない!」
「では、一課への移動を許諾して頂きたい」
「ダメだ!」
こんな感じの押し問答が、既に20分ほど繰り広げられている。
爆破事件から舞い戻った傷だらけの新人が、二課の警部や警部補とこんなやり取りを繰り返しているのだから、騒ぎになるのも当然だ。
普段は目立つことを嫌っているというのに、この日のAはそれすら厭わず、上層に食ってかかっていた。
「冷静になれ」と警部にあしらわれて、Aは一瞬気に食わないと言うように目付きが鋭くなったが、すぐいかにも残念だというような顔に変わる。
「無理もないよ…」
「アイツ、あの爆発に巻き込まれたんだって…?」
「腕痛そう……」
ヒソヒソと聞こえる、尊敬や同情するような声にハッとして、小さく咳払いをする。
自分の机に戻ると、いくつかの資料と一緒にお菓子が並べられていた。
ちら、と周りを見ると何人かが視線を逸らした。
気遣ってくれているのか、と思いながらポケットにしまい込む。
この程度で諦める訳には行かない、と軽く頬を叩く。
事件の資料を手に、もう一度警部の後を追った。
−−−−
「何度言ってもダメだ、キミのそれは私情に過ぎないだろう!一警察官であると言うことを、もう一度しっかり考えるんだ!」
「私情だということは理解しています!
ですが、私情を一切禁じられるというのであれば、私が警官になると決めたことも私情です」
「そんなことは言い訳にすぎん!とにかく、ダメなものはダメだ!」
やいやいと言い合いながら、後ろをついてまわる。
「だいたい犯人の検討もついてない今!捜査をするというのも難しいことじゃないか!」
「だから私がやるって言ってるんです……ッ」
声を貼ったことで、ズキリと腹部が痛む。
それを押えて遠のく背中にまた足を踏み出した時だった。
「ふっざけんじゃねえ!!」
突然響いた怒鳴り声に身体がはねる。
振り向くと、いつの間にか捜査一課の職室前まで来ていたようで
(今の声…)
開け放された扉から中を覗くと、中で啖呵を切っていたのは松田だった。
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作者名:しゃ〜け | 作成日時:2022年12月28日 21時