秘密と約束 ページ41
何とかなだめて、松田が手にしていた書類を受け取る。
それは、私のカルテだった。
「左腕骨折に打ち身に打撲に……
はは！肋骨が折れてんのかよ！しかも3本！」
「笑い事じゃないよ……」
呆れ顔のヒロの横で、松田がギロリと睨みつけてくる。
肩をすくめて、その資料をヒロに手渡した。
「それで…
犯人がもう一人いたってどういうことだ？」
「何？」
話を戻すと、松田もそれに食いついてガタンと椅子を鳴らした。
「ああ……そうだ。
Aたちが爆破に巻き込まれた時…あの時すでに事故で犯人は死んでたらしい。だが、その後爆弾は爆発した……｣
「なるほど…後で起爆した人間がいたってことか。
私は、あの時犯人が警察に捕まる瞬間に、起爆スイッチ押されたら死ぬなって思ってさ…｣
間違いなく死んでいた。
「しっかし、悪運が強くてよかったな。お前ら」
「…生きててほっとしたくせに。
泣いてたくせになぁ？」
口元に手をやって、小馬鹿にしたようにニヤつくと、松田の眼光が益々鋭くなった。
「お前……またやられてえか？」
青筋を立てたままにっこりと笑う松田に、笑顔で「嫌だ」と返す。
そのやり取りを見ていたヒロが「ぷっ」と吹き出した。
「なんだか、懐かしいね」
「…そうだな」
「つーか、お前もゼロもどこに
「…オレの事は別にいいだろ？」
「いーや、今日こそは答えてもらうからな。
毎回かわしやがって……」
足を組んで肘を着いた松田が、じとりとその目を向ける。
同じように、じっとヒロを見つめた。
「え…
ええっ……と……」
ヒロは困ったように2人を交互に見るが、静かなその圧に、ついに肩を落として微笑んだ。
「…わかった。二人なら信用できるし…
それでも、絶対に誰にも言わないと誓える？｣
手を組み、俯きがちだが真剣な眼差しに、頷きを返す。
それを確認すると、｢ありがとう｣とまた笑って、声を落とした。
「オレの所属は、警視庁公安部なんだ」
「公安…」
「道理で連絡がつかねえわけだ……納得いった」
「……だから、いい？
絶対に誰にも言わないこと。オレは皆のことを巻き込みたくない。
それが出来ないなら…今のことは忘れるんだ」
心配そうなヒロに、松田と顔を見合せてお互いに笑う。
「大丈夫だ、ヒロ」
「俺らは萩と違って口堅ぇし、安心しな……でも！」
「…でも？」
「たまには、俺らとも飲みに行こうぜ」
拳を突き出した松田に、ヒロは驚いて目を見開いていたが、心底嬉しそうに笑うと拳を突き合わせた。
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作者名：しゃ〜け | 作成日時：2022年12月28日 21時
