地獄の一丁目 ページ33
その日は、突然に訪れた。
「爆弾の場所はわかったのか!!」
「規定地区から半径1キロの市民の避難を……!!」
11月7日の朝、何となく昔の先生の資料がみたくなって、7時前には職場にたどり着いていた。
書庫室に入って、ペラペラと資料を見ていると、不意に外が騒がしくなる。
「あの、何があったんですか!」
バタバタと走り回る刑事のひとりを捕まえて事情を聞くと
「知らないのか!さっき、ファックスで2箇所に爆破予告があったんだ!正午までに……今は対象区域の避難誘導と……爆処に連絡もしなければ」
「爆処なら…知り合いがいるので私が連絡しておきます!」
「そうか、頼んだぞ!!」
端末を握りしめ、2課の職室へ走った。
コール音を耳に、階段を段飛ばしで駆け下りていく。
『…あー?Aか?』
プツッとコール音が途切れ、どこか眠そうな松田の声が聞こえてきた。
「いいか松田、今すぐ荷物まとめて庁に来てくれ!」
『はぁ…?おいおい…出社まで、まだあと1時間は…』
「警視庁に、爆破予告が来たんだよ!今日の正午!
分かったら萩原も連れてとっとと来い!!期待の新人エースだろ!!」
『………マジかよ!?
わかった、萩連れて直ぐに向かう!
連絡サンキュな!』
通話はそこで切れる。
2課の扉を開け放ち、騒然とする室内へ飛び込む。
「中森警部補!!先程、警視庁に爆破予告が届いたと聞きましたが…」
「その通りだ。それで、本来なら捜一の奴らの仕事だが……規模がデカくて、避難誘導等の人手が足りていないらしい。
だから、ワシらの課からも人を借りたいと言われている」
「…であれば、私も行きます!構いませんね?」
「君は特殊班だろう…それにまだ入って1ヶ月程度のヒヨっ子が……」
「だから、ですよ警部補。
私如きの新人が出来ることといえば避難誘導などその程度。対策本部に参加するまでもありません。
それに人足りないんでしょ?いいですよね?」
ニコリと営業スマイルを貼り付けてそう言い放つ。
中森警部補もそれを受けて、難しそうに眉を寄せたが、一息ついて「仕方ないな…」と許諾を出した。
「なら、君には杯戸町のマンションの方に行ってもらおう。だが…」
またなにか言いかける警部補を、真剣な顔で待つ。
「要求は10億円の用意だ。そして、犯人は爆弾をしかけた高層マンションの住人を避難させるな、と言っているんだよ……」
「マンションの住人をですか!?
確か爆発予定時刻は正午……あと4時間程度しか……!!」
期限は限られている。
……つまり、時間までに爆弾を解除するか、要求を飲むかしかないということだ。
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作者名:しゃ〜け | 作成日時:2022年12月28日 21時