それぞれの道へ ページ30
式典も終わり、座りっぱなしで疲れた背中を思いっきり伸ばす。
「なぁAちゃん、良かったらオレたちと写真撮らない?」
「…もちろん喜んで。ただ………」
「ただ?」
「あそこのモテ男どもを女子から引き離してからだな」
ヒロの後ろでは、女子に囲まれ、にこやかな笑顔を浮かべている萩原とどうしたらいいか分からず、苦笑いを浮かべているゼロの姿。
「あーあ…もみくちゃ……」
「ゼロもモテるからなあ」
まるで自分事のように微笑むヒロに、つられて頬が緩んだ。
「大変な目にあった……」
「降谷ちゃんモッテモテなんだから〜♡」
「ほらほら、とっとと写真撮っちまおう」
2人を促し、先に向かうと言っていた松田と班長の元へ。
警察学校、と記された石碑をバックに5人を並べる。
「Aちゃん、先入りな?」
「いや、先に萩原が入りなよ。私は後でで構わないから」
ほらほら、と背中を押して画角に押し込んだ。
スマホをしっかりと構え、5人をレンズに収める。
「…そーいや、この辺の桜の木だったよな。降谷ちゃんと陣平ちゃんが殴り合いしてたの…
結局、どっちが勝ったか分かりゃしなかったなぁ……」
独り言のようにボヤいた萩原の言葉に、該当者二人が反応する。
(馬鹿そんなこといったら……)
「はん、あん時は俺が勝ってた」
「いやいや…何を寝ぼけたことを……あれは僕の勝ちだ」
「ンなわけねーだろパツキン大魔王!へろっへろになってやがったくせしてよー!」
「ヘロヘロなのは君だろ!?知ってるからな!あの後Aに肩貸して貰った話…」
「なっ…萩!!てめぇだな話したの!!」
「いや、私だな」
「お前かよ!!」
ギャンギャンと騒ぎ出す2人に、見かねたのか、間に挟まれていた班長が動き
「お前らそこまで!ほら!」
がっちりと2人の肩をつかまえる。
「ナイス班長…!撮るぞー!3、2……」
画面のシャッターが落ち、画像が保存される。
「お…いいんじゃないか?」
「どれどれ……ははは!こりゃいいな!」
「ったく…松田のせいだぞ?」
「俺かよ」
なんだか、わちゃわちゃとした写真になってしまったが、これはこれで、5人らしくていい。
そう思っていると、不意に腕を引かれた。
「ほらほら!次はAちゃん込みで!」
「え、うわっ」
引っ張られ、先程班長のいた場所へと立たされる。
「すみません、ちょっと僕らのこと撮ってくれませんか?」
ゼロが近くの生徒に話しかけ、カメラがこちらへ向けられる。
「撮りますよー」
「ほら、A」
「ちゃんと笑えよー?」
「!……おう」
気恥ずかしくも、ふっと微笑む。
シャッター音が、騒がしい空に響いた。
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作者名:しゃ〜け | 作成日時:2022年12月28日 21時