清掃4日目 ページ21
清掃が始まって今日で四日目、体育祭まであと3日と言ったところだった。
「新宮さん!お願いします!!」
「私からも!お願い!!」
「新宮さん!」
「ええ……」
目の前で頭を下げる数人の女子に囲まれ、Aは気まずそうに顔を引きつらせている。
「えっと………どういう状況?」
「実はね、騎馬戦の騎手の子が、階段から落ちて足くじいちゃって…新宮さんなら、体格も小柄だし、運動神経いいからさ!!」
「な、なるほど………」
「ね!お願い!!」
「鬼塚教場を助けると思って!」
詰め寄られるその圧に、彼女はたまらず苦笑するしか無かった。
−−−−
「……ってことがあったんだよ」
「へー…」
カウンター部分をたわしで磨きながら、いかにも鬱陶しそうにAはため息をついた。
「まぁたしかに、お前チビの割に瞬発力たけえからな、適任なんじゃねーの?」
松田が笑い混じりにそう返すと、彼女は「目立つのは嫌いだ…」とますます眉をひそめた。
「だいたいチビじゃない、平均」
「そーだなチビ」
「殺す……」
洗剤をカウンターに追加し、たわしでさらに擦る。
「そーいや、他の3人は?」
「班長は教官に呼ばれてった、ヒロは女子に絡まれてるのは見たけど……多分混成リレーだろ。
萩原は知らない」
「ふーん……おいゼロー、お前萩がどこいったか知らねぇ?」
「萩原?いや……見てないけど」
さてはサボりかあいつ
脱衣所の方へ姿を消したゼロを横目に、横にあった桶をひっくり返して泡を流す。
「松田も騎馬戦じゃなかったか?」
「俺だけじゃなくて、アイツらも全員騎馬戦参加だよ。騎手はゼロだけどな……」
「そうだったのか……」
たわしを持ち直したところで、桶の中のお湯を先程使ってしまっていたことに気づく。
手を伸ばせばすぐ蛇口に届くのだが、それよりもすぐ隣でモップをもってはいるが、特に何もしていない松田を呼ぶ方が早かった。
「松田。蛇口、出してくれないか?」
「んー、へいへい」
だが、それがまずかった
「ゔっ」
「あっやべ」
頭の上から降り注ぐ水に、また全身がずぶ濡れになる。
(……自分でやればよかった)
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作者名:しゃ〜け | 作成日時:2022年12月28日 21時