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「__ったく、いつまでかかんだよコレ?」
次に文句を言い出したのは、松田だった。
確かに、あれからもう1時間ほど掃除を続けているが、風呂場はまだ汚れが残り、脱衣場も片付いていない。
「もっとテンション上がる話しながらやらねーか?」
「賛成」
「テンションねぇ…」
同意はするが、そんな簡単に話のタネは思いつかない。
考え込んでいたところ、萩原が話し始める。
「そういえば諸伏ちゃん…さっき見てた捜索願の女の子、何かあんじゃねーの?」
捜索願の女の子。
先程、教官室に呼び出された際に、部屋に置いてあったビラのものだ。
どうやらヒロは最近その子を見た事があったらしく、何か気がかりになっているらしい。
「あの子…子供の頃よく遊んでいた女の子にそっくりで…
まぁその子は病気で亡くなったんだけど、気になる事が……」
「幼なじみって事は、僕もその女の子に会ったことがあるのか?」
「いや…長野にいた頃だから」
そんなやり取りに興味をそそられたのか、松田たちはその話をするように促している。
だがヒロは、話すのを渋るように「全然面白い話じゃないから」と笑って誤魔化した。
「あーーもう!止めだ止め!!」
その様子に、ついに痺れを切らした松田が声を荒らげた。
「諸伏が自分から言い出すまで待ってくれってゼロが言うから、遠慮してやってたけど…やってらんねーぜ!!
お前、自分の親父と母ちゃん殺した犯人を捜してんだろ!?」
「ええっ!?」
何でその事を、とでも言いたいようなヒロの表情を他所に、松田はさらに「女の子の事件が、その事件と関係してそうだと思ってんじゃねぇのか」と、重ねて言った。
「そ、そう……そうなんだけど……ダメだ!!」
何かに怯えるような、思い詰めるようなあの表情。
(…バイク店の時とか、たまに感じてたあの雰囲気はこれが原因か)
「これはオレが解決しなきゃならない事件……もう誰も巻き込みたくないんだ…また誰かが死んだりしたら」
怯える理由はそこか。
なら問題なんてない。
「「死なねぇよ!!!」」
「これまで散々…」
「ヤベェ橋渡ってきたけどよォ…」
「6人いれば…」
「どれだけやばい事でも…」
「何とかなったっしょ?」
「だから話しちまいなよ、景の旦那
悪いようにはしねぇからよォ……」
口々にそう告げると、ヒロはおかしいとでも言うように吹き出した。
「「悪いようにはしない」って、悪者のセリフだよね?」
その言葉につられて茶化す言葉に、松田は「うるせぇよ!」と照れながらキれている。
「わかった!話すよ
今から15年前、オレの中の時計の針を凍りつかせた…あの鉄の匂いが立ち篭める…恐怖の夜を」
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作者名:しゃ〜け | 作成日時:2022年12月28日 21時