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会話 ページ45

強くなる雨は、窓に打ち付けられては水音を立てる。

「千影さんは……大丈夫……じゃないですよね。
やる事、いっぱいあるでしょうし」

『ええ…でも周りも支えてくれてるし、今はもう大丈夫よ。
ごめんなさいね、本当ならもっと早く連絡しようと思っていたのに』

「いえ、お気になさらず………快斗君は」

『…あの子をスグ海外に連れていく訳にも行かなかったし、今は知り合いの家に預けてるわ。
ずっと泣いてたけど……お友達のおかげで、ちょっとは元気出せたみたい。


それに……私はAちゃんの方が心配よ。
今は元気でやってる?ちゃんと、ご飯食べてる?』

大変なのに、私に構ってる暇なんて、本当はないはずなのに。

優しげな千影さんの声に、泣きそうになる声を抑え、微笑むように「大丈夫です」と返す。


「…今は、警察学校の寮に住んでるんです。それで、講義中でちょうど連絡が取れなくて。

ここを卒業するまで、警察になるってこと、先生には黙っておこうと思ってたんですが……」

『あら…だから携帯の方は繋がらなかったのね。どこの番号なんだろうと思っていたから、びっくりしたわ。


でも、そう……警察になるのね、それは私としても鼻が高いわ』

「サプライズ、のつもりだったんですけどねぇ」

『きっとあの人も驚いたわよね』

受話器越しに、困ったように笑う千影さんの声が聞こえる。
優しい声色に、胸が締め付けられた。

泣くな

泣いたら千影さんに迷惑だ。

より強く、拳を握りしめた。
手のひらの傷がまだ治ってなくてよかった。伝わる痛みが、しっかりしろと訴えてくるようだった。


「じゃあ……暫くはそちらに居るんですね?」

『ええそう、2週間ほど。
快斗には寂しい思いをさせてしまうけど……あの子ならきっと大丈夫だって、思っちゃうのよね』

「そうですよね…あの、千影さん。
私に力になれることがあったら」

『ねぇ、Aちゃん』

重ねられるように、少し強くかけられた声に背筋が伸びる。

「はい」

『………ありがとう、でも』


泣きたい時は、泣いていいのよ。
その方があの人も喜ぶと思うから。

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しゃ〜け(プロフ) - 早桃さん» 早桃さん、コメントありがとうございます〜!!!面白行っていただけてもうめちゃくちゃ嬉しいです!!頑張って更新していくので、今後も是非よろしくお願いします〜!! (2022年12月27日 1時) (レス) id: 8454d3df8d (このIDを非表示/違反報告)
早桃 - すっごい好きな作品です!面白い!これからも無理せずに更新頑張って下さいね!応援してますぅぅぅ! (2022年12月26日 12時) (レス) @page37 id: f9af42ef58 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:しゃ〜け | 作成日時:2022年12月19日 2時

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