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雨天 ページ43

その日はバケツをひっくり返したような雨だった。

「酷い雨だ」

そうこぼしたのは、頬杖を着いたまま外を眺める灰色髪の女性。

「そろそろ梅雨近いからねぇ〜

この時期になると、いっつも陣平ちゃんの髪が爆発しててウケんだよね」

返すのは萩原、当の松田はと言うと講義中だと言うのに呑気に寝こけている。

いまはグループでの作戦立案のデモ中、教官は見回りこそすれど、ある程度話が進んで発表内容もまとまっている時点で、ここではもうやることがなくなっていた。

「やっぱり、ゼロとAが居ると早いな」

「ヒロも、あそこであのルート出せるのはなかなかすごいと思うよ」

「ちょっとちょっと、俺達も案だしてるの忘れないでよねー?おにーさん」

茶化すような萩原に、班長も同意するように頷いている。

「まぁお前らがすごいのは俺がいちばんわかってるしな!」

「あら、嬉しいこと言うね」

班長の笑顔に返すように、冗談めかしく笑う。

「陣平ちゃんはなーんにもしてないけど」

「寝てるしなぁ」

遠目で教官が別の班と会話をしているのを確認して、苦笑する。

そろそろ起こした方がいいか、まだ大丈夫そうだと空いた時間を潰していた。

「ゼロ?」

「え?」

窓の外、遠くを眺めるようなゼロの様子に気づいたヒロの声に、彼は現実に戻されたようで。

「どうかした?」

「ああ…いや、確かに酷い雨だと思って」

「ほんとほんと、こんなんで再来週の体育祭実施出来るのかなあ」

「そうか…そういえばそんな時期か…
なら、来週から予行練習も始まるな」

肘を着いて、ガラス越しの空を見上げる。
鈍色に沈んだ雲が、目に見える速さで流れていく。



そういや、あの時もこんな天気だったな。



「……」

聞こえる悲鳴。

迫る鋼の刃。

何も出来なかった。

怖くは無い、雨だとたまに思い出すだけ。




「……A?大丈夫か?」

今度はゼロから声をかけられる。
気が付かないうちに、傷跡を手で触っていたみたいだ。

少し心配そうなヒロとゼロに、首を振って「大丈夫だ」と返す。


雨は、別に好きでも無ければ、嫌いでもない。
ただ、この時だけは、早く止めばいいのにと思うばかりだった。



だが結局、一日中ずっと雨は降り続いた。

それは突然に→←その後



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しゃ〜け(プロフ) - 早桃さん» 早桃さん、コメントありがとうございます〜!!!面白行っていただけてもうめちゃくちゃ嬉しいです!!頑張って更新していくので、今後も是非よろしくお願いします〜!! (2022年12月27日 1時) (レス) id: 8454d3df8d (このIDを非表示/違反報告)
早桃 - すっごい好きな作品です!面白い!これからも無理せずに更新頑張って下さいね!応援してますぅぅぅ! (2022年12月26日 12時) (レス) @page37 id: f9af42ef58 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:しゃ〜け | 作成日時:2022年12月19日 2時

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