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短編:Who I am?(茂々×Under/Heart) ページ36

「私は、何をしていた人間なのだ・・・・?」
徳川茂々と名乗った典型的な武士の格好をした人は呟いた。
そもそも、徳川と言ったら教科書では必ず載るレベルの偉人で知らない人は日本中・・・いや世界中で探してもさほどいないだろう。
それぐらいの最高位級の偉人の名前に似た彼は────自分が何をしていたのか、分からないと言っていたのだ。
「・・・・・・嘘でしょ」
「俗に言う、記憶喪失なんっスか・・・!?」
慧悟の驚いた言葉に、茂々は頷く。
彼曰く、徳川茂々として生きていた記憶はあらかたある。しかし、自分か何者であるか分からない。つまり、記憶はあったとしてもそれが意味を成さないということなのだ。
「・・・・茂々さん。先程居た場所に来る前の事は、覚えていますか?」
「・・・・・・朧気だが、旅人に似た風貌の人物が、私に問い掛けたのだ。生きたいか、と。
私はその御人に生きたい、と言ったのだ。その後────ならば歓迎しよう、君をこの苦痛から解放させよう、と言って・・・・」
「記憶が、切れたのかい」
そこからは、何も言わなかった。
つまり、徳川茂々はかつての記憶を、自分の物と実感できないということだ。
例えるなら、彼という人生を眺めているだけで登場人物が、自分と思えないと言うことだ。
「フィルムに映った幽霊・・・・みたいだね」
そう言われ、茂々は暗い顔をした。
彼は、彼が分からない。自分が本当に徳川茂々なのかさえあやふやだと。
彼が、何か得体の知れない者のように思える。
それがとても不安で────とても寂しい。
「でも、記憶は戻らないって訳じゃないんでしょ?」
突然、静葉は言い出した。
「だったら、記憶が戻るまで一緒に居ればいいじゃない!確かに、茂々さんの記憶は抜けてる。でも戻らないって訳ないでしょ?
それに・・・茂々さんの格好見るからにして、かなり身分は高い所だと思うわ。私が言うのもアレだけど、狭苦しい生活をしてたでしょ?」
「・・・あぁ、その様な記憶は僅かだが・・・」
「なら、前向きに捉えましょ。この世界の自由で色々な刺激を与えれば、記憶は戻るはずよ!それに・・・茂々さんだって、味わってみたいでしょ?

身分も、階級も、忖度も、関係ない自由な世界ってのを!」
出来うる限りの自然さで静葉は言う。
しかしそれは、がらんどうの茂々には、何よりも温かかった。
「・・・・本当に良いのか?」
「えぇ、今日から貴方は────ごく平凡な一般人よ!」

この小説の続きへ→←短編:苔でコケるって、やかましいわ(土方×春咲姉妹)



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神埼梨花(プロフ) - riiuさん» 色々ごちゃまぜ(´°Д°`) (2019年11月15日 22時) (レス) id: a74ed67423 (このIDを非表示/違反報告)
riiu(プロフ) - 優里菜ちゃんに聞くんか…嫌な予感しかしませんね本当にありがとうございました() (2019年11月15日 22時) (レス) id: d32ce14729 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:梨花 | 作者ホームページ:http  
作成日時:2019年11月15日 22時

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