Shadow Angel #32 ページ32
彼女が落ちた穴は割と深さがあったようで、上から降り注ぐ一筋の光以外は闇一色に包まれていた。
岩でできた洞窟のようなそこは、しんしんと冷える。
カタカタと震える体を抱きしめてようとしても、足に食らいついた罠が邪魔で上手く起き上がることさえ叶わない。
……石の上にも三年とか言うが、間違いなく凍え死ぬ方が先だ。
最初に言った人何考えてるんだ。
(………さむ、い………)
ドクン、
ドクンと、鮮血が滴る足が熱く脈打つ。
反比例するように、末端が恐ろしいくらいに冷えていく。
雪山で遭難した時は絶対に寝てはいけない、
……そんなある種の常識を、彼女が知る訳もなく。
不意に襲ってきた眠気に、瞼を閉じようとした、
時。
グル……
はっと意識が覚醒した。
暗闇に浮かんだ、金色の目。
近くに感じる、獣の息遣い。
「……っあ……」
じっと自分を見つめる二つの黄金。
喰われる、
その恐怖に体が凍りつく。
立ち上がることさえままならない彼女は、この獣にとって格好の餌に違いない。
助けを呼ぼうとしたところで、誰も来るわけがない。
………彼女を助けてくれる人なんて、ここにはいなかった。
喉が張り付く。
気配が近づいてくる。
死を覚悟して、ぎゅっと目を閉じた、
が。
(………ん……？んっ？)
もそりと、温かく、柔らかな毛皮が腕に触れた。
そっと目を開ければ、一匹の虎が彼女に擦り寄っていた。
まるで、冷えていく彼女の体を温めようとでもしているかのように。
大きさ的に大人の虎ではないだろうが、高めの体温が今の彼女には何よりも嬉しかった。
腕を伸ばし、喉元を撫でれば猫のようにゴロゴロと喉を鳴らすソイツ。
甘えるような仕草に、
感じる温かさに、一つ白い息をついた、
その時。
「Aッ……！！」
自分の名を呼ぶ声が、聞こえた。
虎が驚いて飛び上がったのと同時に、
ここ数日ですっかり馴染んでしまった香りに包まれた。
.
Shadow Angel #33→←Shadow Angel #31
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 730人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ONEPIECE」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
etoile(プロフ) - viaさん» via様…！ご訪問、そして感想ありがとうございます（ ; ; ）どこまでキレさせるか迷ってたんですが、これは振り切ってしまえと笑 いつも温かいメセありがとうございます。癒されております。。 (2021年10月10日 17時) (
レス) id: cf27cf6997 (このIDを非表示/違反報告)
via - etoile様の新作を見つけて飛んできました...！相変わらず素敵な作品ありがとうございます( ;ᯅ; )死の舞踏会とは全く違う世界を楽しませて頂きました。ミホークやっちゃいましたね…笑これからも応援しています。長文失礼しました。 (2021年10月10日 13時) (レス) @page27 id: 958b7942c0 (このIDを非表示/違反報告)
etoile(プロフ) - にこぴさん» はわわわ、ありがとうございます…！最高の褒め言葉頂きました、もったいないお言葉です(*´ω`*) (2021年9月25日 19時) (レス) id: cf27cf6997 (このIDを非表示/違反報告)
にこぴ - ほわわわわ、、、死にそうなくらいすきです、、面白いです。天職ですか？？ (2021年9月24日 23時) (レス) @page12 id: 8ace50b083 (このIDを非表示/違反報告)
etoile(プロフ) - 狐仮面さん» 嬉しすぎるコメントありがとうございます…！背中を押して頂いて更新してきました(*´ω`*)いつでも両腕広げて正座待機でお待ちしております。。 (2021年9月23日 14時) (レス) id: 3d5d0c0882 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：etoile | 作成日時：2021年9月21日 23時
