23 呼んで ページ23
先輩は、硬直する私の手を掴んで引っ張っていく。
待って、なんでだ。
「平岡くん…ですよね、あれ…」
「あんま見んとき、はよ行くで」
不意に、足が止まってしまった。
信じてたのに、って思った。振った身の分際で。
「瀬川」
「…」
「そんな顔すんなや、俺がおるやろ…な？」
「先輩…！」
また、先輩と一緒に、歩き出した。
私はひとりじゃない。大丈夫、大丈夫。
「ごめんなさい…やっぱりちょっとショックで」
「俺もやわ。まさか遊び人やったとは」
「あぶなかったです」
遊ばれるところだった、って。
ゾッとする。
「お前はそういうの大っ嫌いなタイプか」
「誠意のない恋愛は嫌です…」
「俺も」
の割には散々弄ばれてるけど。
「コロッケ買ったる」
「ほんとですか！」
「先輩の奢りや〜」
私にとって、恐怖の対象。
私の命を狙う存在であり、血を好む化け物。
でも1番、隣にいて欲しい人だな。
ただ偶に、傍に来て、私の名前を読んでくれるだけでいい。
「うんま」
「あったかいですね」
「もう1個行こかな…」
「早く帰ってちゃんとご飯食べてください」
「ちぇ、はーい」
私の前を歩く。
後ろ姿だってかっこいいんだ。
たくさんの女の子の中の一人でいい。
特別扱いはいらない。
もう、殺されたっていいかも。
最期に見るのが貴方の顔なら。
みどりたろうの飼育を引き継いでくれる人でも探しておこう。
チーノ兄ちゃんがいいかな。
「なあ」
「はい？」
「俺のことシャオロンって呼んでみ」
「そんな馴れ馴れしい…」
「これな、俺のほんまの名前」
「…」
「俺は人間ちゃうからね」
少し、寂しそうに笑った。
偽りの名前を作ってまでその身を隠していたんだ。
本来の名前を、かき消して。
「シャオロン…先輩」
「んふ、Aーっ」
そりゃ、寂しいよな。
知ってはいけないことを知ってしまったのが、私。
でも、分かり合えるのも、私。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 35人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
さかなしょこじゅん - ちら(みかもん)さん» はじめましてー！！！なんちゅう！！嬉しいです、嬉しいです、ありがとうございます！！！恐縮です、拙者これからもがんばります！！！！ (12月5日 15時) (
レス) id: 2941b15b39 (このIDを非表示/違反報告)
ちら(みかもん)(プロフ) - はじめまして！衝動で一気読みしちゃいましためちゃんこ好きです､､､！！！性癖詰め込まれすぎて鼻血出てぶっ倒れるところでした､､､()めちゃファンになりました、さかなしょこじゅんさんの作品読んできます！ (12月4日 4時) (レス) id: b06dce0be8 (このIDを非表示/違反報告)
さかなしょこじゅん - みーのさん» 何方かと思えばみーの氏じゃあないですか！！！ありがとうございます！！！ワァァ、あちらにもコメントくださいましたよね、確か。めちゃくちゃ嬉しいです…泣きそう、泣く (10月18日 13時) (レス) id: 2941b15b39 (このIDを非表示/違反報告)
みーの - うわああめっちゃ好きです…この前『地縛霊と社畜A』も読ませていただいたんですけどほんとに、さかなしょこじゅんさんの作品めっちゃ大好きです！！ (10月17日 0時) (レス) @page30 id: c910479154 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：さかなしょこじゅん | 作成日時：2023年9月21日 21時
