愛され少女はヒーローの卵

緑谷出久〈傷跡4〉 ページ34

「……お互いで守り合う、か。いいね、それ」


『でしょ？』


「…………ちゃんと僕が言ってる意味、分かって言ってる？」




背中を守り合う、つまりずっと隣にいる。


側にいて、お互いを支えながら。




『……うん、分かってる』




その意味が分からないほど、


…私は鈍感じゃない。




「…名前ちゃん、大好き」


『私も、大好き。……出久、ありがとう』


「僕の方こそ、ありがとう」




そう言って、2人で笑い合った。




『…次のインターンで、ちゃんとお礼言わなくちゃね』


「そうだね……って！暫くは無理だからね！！？」


『えーでも、リカバリーガールに頼み込めば…』


「無茶し過ぎだよ！！」




確かに、リカバリーガールの治療は疲れるけど。


私は早く治して、そして強くなりたいのだ。


プロと肩を並べられるように。


出久と、背中を守り合えるように。




『…出久に無茶とか言われたく無い』


「う゛っ！！！」




顔を手で隠す出久。


その手はもうぼろぼろで、


原型を留めてはいない。


でも、そんな手の傷跡は、


強くなろうと踠いた、


彼の勇気の証でもあって。


私は出久の手をくいっと引っ張って、優しく撫でる。




『……ねぇ。ゲームしよっか』


「どんなやつ？」


『今から、怪我した方が負け』


「…じゃあ、負けた方は罰ゲーム」


『いいね。何にする？』


「うーん、……あっ！かっちゃんに正面から悪口を言う、とか…………」


『わぁー死ぬやつだそれ………負けらんない』


「……うん、僕も自分で言っててヤバいと思った」


『じゃあ、よーい…スタート！』




その後、看護婦さんが様子を見に来て、起きてるなら知らせなさいと怒られる出久が可愛かった。

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