- 漆黒 - 2 (ページ31)

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- 壱馬 -

ツアーファイナルまであと3日に迫った頃。

たまたま用事があって、事務所に立ち寄った。

目の前を見ると、AとHIROさんの姿。

声をかけようと距離を縮めると同時に聞こえた会話は、思わず耳を疑うような言葉だった。

HIRO『本当に、行くのか。』

「はい、もう決めたので。」

HIRO『あいつらには黙っていくのか？』

「言ったところで、どうにもならないですし。笑

よく思われない気しかしないので。」

正直よくわからなかったけど、いい話じゃないことくらいはわかった。

HIRO『…A、そんなに無理やり行かなくても「HIROさん。」ん、？』

「私、決めたんですよ。

グループに戻るなら、自分が何らかのスキルを持って帰ってこないとって。

誰しもに認めてもらうには、完璧でいないと。

ただでさえ女なんですから。

どんなに私が女であることを恨んでも、後悔してても、ファンの人や見てる人にはわからないんですよ。

どんなときでも完璧じゃないと、批判の的である私がいる意味なんてないんです。

生半可な気持ちで今更戻れませんよ。笑」

なんて、いつからこいつはそんなに大人になったんだろう。

毎日誰かにくっついてて、一人じゃ何もできなくて、

誰かに守られてるAは、もうどこにもいなかった。

HIRO『何時の便で行くんだ？』

「んー、ファイナル見届けた次の日の早朝便です。

やっぱり最後に、目に焼き付けたくて。」

ファイナルの次の日…………

こいつは、海外にでも行くつもりなのか、？

馬鹿正直に聞いても答えてくれないことはわかってる。

じゃあどうしたら聞き出せる？

そんなことを考えてると、気づくと前にいたはずのふたりはいなくなっていた。

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