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それから目の前に座る五条悟という人物は私に呪霊、術式、呪力…私が今まで見ていたもの、感じていたものを教えてくれた。
「君の術式は少し特殊だね」
五条さんは青い瞳でちらりと私の瞳を捉えてそういった。
「特殊?」
「Aの場合は祓うっていうより成仏させるって感じみたいだね。呪霊を根本から分解させるんだよ、呪いを君が肩代わりしてね」
「五条さん、肩代わりって…」
説明中、口を挟むことがなかった伏黒くんが口を開く。
「呪いと感覚を共有すること、それがつまり肩代わりっていうんですか」
「まあ簡単に言えばね。A、呪霊に触れるの辛くないの?」
五条さんが声を低めて私に問う。伏黒くんも私のほうを見つめる。部屋には時計の音が響く。
つらい、苦しい、助けて、もう嫌だ―――
そんな感情が流れ込んでくるのだ。辛くないわけがなかった。それでも。
「嫌な感情を私がみることになるから、辛いですよ。でも、そうすると呪霊はきれいな光の粒になるんです。すると感じていた辛さとか汚さとか、全部光と一緒に昇っていくような気持ちになるんです」
口から流れ落ちる言葉は流暢に紡がれる。五条さんと伏黒くんは変わらず黙ったまま私を見つめている。
「呪霊が、助かるなら。五条さんがいうみんなの負の感情が、消えていくなら。私はこれからも変わらず呪霊に触れます」
私の声は部屋に溶け込んだ。空気が一瞬静かになって、五条さんは小さな声で呟いた。
「Aって、変わってる?」
「え?」
「いや普通自分が呪い肩代わりとか嫌でしょ。自分関係ないんだし」
「そうですか、ね……。でも、私が共感すればこの世の呪いが少しは減るってことですよね」
「……まあ」
「私が共感するだけで、呪いが減るならそれでいいじゃないですか」
五条さんは口を噤んだ。青い瞳はサングラスに遮られ、感情を読み取ることは難しくなっていた。
「Aは」
伏黒くんが口を挟んだ。
「Aは、呪術師になるつもりか」
彼の瞳が私を捉える。
「私に出来ることがそれなら」
彼の目をみて答える。五条さんに出会えてよかった。私のやってきたことは間違いじゃない。
伏黒くんは私から目をそらして、小さくそうか、と呟いた。
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雛形(プロフ) - hiyoriさん» hiyoriさんコメントありがとうございます!凄いと言っていただけて本当に嬉しいです…!私の場合小説を作る時はテーマを決めて大体のプロットを立ててから書き始めています。1話1話はそれに沿うように勢いで書いて推敲して、というような感じですね! (2022年10月3日 8時) (レス) id: 75869cdb85 (このIDを非表示/違反報告)
hiyori - 凄いです😭 どうやって小説は作るんですか? (2022年10月2日 22時) (レス) @page5 id: 3185205e6c (このIDを非表示/違反報告)
雛形(プロフ) - アキさん» アキさんコメントありがとうございます!他の小説も読んでいただいた上にさらにコメントまで!本当にありがとうございます!嬉しすぎて転げ回ってしまいます…!不定期更新になりますがこれからも頑張りますね! (2022年9月30日 1時) (レス) @page29 id: 75869cdb85 (このIDを非表示/違反報告)
アキ(プロフ) - 主様の書く小説どれもドストライクすぎます😭💕💕 (2022年9月23日 1時) (レス) id: 011262e667 (このIDを非表示/違反報告)
雛形(プロフ) - 春雪さん» コメントありがとうございます。見直したのですが名前変換できない部分が分からず、念の為更新したのですが現在も変換出来ない様でしたらどの文章の所か教えて頂けますでしょうか…?本当に申し訳ありません💦 (2022年7月24日 23時) (レス) @page9 id: 75869cdb85 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雛形 | 作成日時:2022年1月26日 19時