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朝、目が覚めるとやけに体が重いような気がした。カーテンの隙間から差し込む光はいつもより鈍いような気がする。重たい頭を持ち上げる。少し息が詰まるような気がした。
いつもの通学路。空は朝同様、鈍い灰色をまとっている。雨が降り出しそうな空だった。朝の天気予報では午後にかけて雨が降ると言っていた。少しだけ湿ったような匂い。朝の気だるさは低気圧のせいだと自分に言い聞かせて足を進めた。
教室の机は湿気を帯びていてペタペタとして気持ちが悪い。心做しか次の授業のために出した国語の教科書もいつもより柔らかい気がする。窓の外をみると細かい雨が線となって落ちていた。クラスメイトの声に混ざって雨粒が地面に当たる音がかすかに聞こえてきていた。
「ほら、みんな席ついて。授業始めるよ」
先生の声がして、窓の外から視線を外した。先生が立つ教卓の方に目を向けた瞬間、私は息を呑んだ。
『ハジメル、ヨ』
教卓に立つ国語教師の首に、呪霊が巻き付いている。ニタニタとした表情をした呪霊が私の方に目を向けた。
『ミエテル、ミエテル』
くつくつと喉を鳴らすように、呪霊は先生の首にざらりとすり寄った。先生は違和感があるのか手を首元に持っていく。その手はするりと呪霊をすり抜けて自分の首に触れていた。
「なんか、空気が籠もってない?この教室、息苦しいんだけど」
「え〜雨だし窓開けられないですよ」
先生は軽口を叩くように少し笑っている。教室の空気は重くはなかった。私と、伏黒くんを除いて。
けほ、と先生は一つ咳をしてチョークを手に取り、授業を進めた。首に巻き付く呪霊は変わらず嫌な笑みを浮かべている。じわじわと首に巻き付く力が強くなっているような、それを私に見せつけているような。
先生が黒板の方を向いて、私達に背を向けた瞬間、私は少しだけ振り向いて、伏黒くんにちらりと視線を向けた。伏黒くんは私の視線に気がついて、ぱちりと目があう。伏黒くんは小さく首を振った。今は手は出さない、という意味だった。私も小さく頷いて視線を前に戻す。伏黒くんが手を出さないという選択をしたということはそれほど今は驚異ではないということだ。きっと授業が終わって、誰も居ないところでひと目につかないようにあの呪霊を祓うのだろう。
授業は淡々と進められた。時折先生は息苦しいのか首元に手をのばす。そのたびに私は少しどきりとしたけれど、呪霊はそれ以上力を込めることはなかった。
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雛形(プロフ) - hiyoriさん» hiyoriさんコメントありがとうございます!凄いと言っていただけて本当に嬉しいです…!私の場合小説を作る時はテーマを決めて大体のプロットを立ててから書き始めています。1話1話はそれに沿うように勢いで書いて推敲して、というような感じですね! (2022年10月3日 8時) (レス) id: 75869cdb85 (このIDを非表示/違反報告)
hiyori - 凄いです😭 どうやって小説は作るんですか? (2022年10月2日 22時) (レス) @page5 id: 3185205e6c (このIDを非表示/違反報告)
雛形(プロフ) - アキさん» アキさんコメントありがとうございます!他の小説も読んでいただいた上にさらにコメントまで!本当にありがとうございます!嬉しすぎて転げ回ってしまいます…!不定期更新になりますがこれからも頑張りますね! (2022年9月30日 1時) (レス) @page29 id: 75869cdb85 (このIDを非表示/違反報告)
アキ(プロフ) - 主様の書く小説どれもドストライクすぎます😭💕💕 (2022年9月23日 1時) (レス) id: 011262e667 (このIDを非表示/違反報告)
雛形(プロフ) - 春雪さん» コメントありがとうございます。見直したのですが名前変換できない部分が分からず、念の為更新したのですが現在も変換出来ない様でしたらどの文章の所か教えて頂けますでしょうか…?本当に申し訳ありません💦 (2022年7月24日 23時) (レス) @page9 id: 75869cdb85 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雛形 | 作成日時:2022年1月26日 19時