3. ページ3
幼い頃から私にはこの変な生き物たちが見えていた。
小さい頃に一度、この生き物たちについてお父さん、お母さんに聞いたけれど「熱でもあるのか」と心配されてそれ以来この話をすることはなくなった。友達も近くに変な生き物がいても動じないから、きっとこれは私にしか見えないんだろうと思っていた。
小学生になった頃、丁度6歳くらい。
ふわりふわりと浮いているぎょろぎょろした目玉の小さい生き物に触れた。
『ズルイ、ズルイ』
頭の中に声が流れてきた。小さい女の子の声。
『なんで、お姉ちゃんばっかりお母さんをひとりじめするの』
独りぼっちの女の子の声。
ふと、頭の中にある映像が浮かび上がる。
白いベッド。横になるお姉ちゃん。傍に座るお母さん。
ここは、病院。色んな管が繋がったお姉ちゃんは静かに眠っている。お母さんはお姉ちゃんの手を握っている。
私は、その2人を後ろからずっと眺めている。
お母さん、こっちを向いて。
私の手も握ってよ。
そこまで流れ込んできて、ハッと目が覚める。
触れていたぎょろぎょろ目玉の小さい生き物は、ぽろぽろと崩れていく。崩れた先からキラキラと小さな光になって、ゆっくりゆっくり空へと昇っていった。
私が見た頭の中のあの映像は、きっとこの生き物の気持ち。
幼いながらに私にはそれが理解出来た。
この経験を境に、私は変な生き物たちに触れるとその生き物の気持ちを理解できるようになっていた。いや、理解と言うより見せつけられるといったほうが正しいのかもしれない。
この生き物から感じとれる気持ちは決まっていつも悲しかったり苦しかったりした。楽しい気持ちになることはなかった。
『あいつなんて嫌いだ』
『なんで私ばっかり』
『もうやめてよ、いたいよ』
そんな声が聞こえて、その感情になる場面を見せつけられる。
つらい、苦しい、嫌だ、逃げたい
まるで私がその場面にいたかのように、まるで私がそう感じているかのように。頭の中で繰り返される映像。
ただ私がその苦しい気持ちを感じ取ると、決まって目が覚めて変な生き物たちはキラキラと崩れ去る。その光はまるで救われたとでもいうように、高く高く天へと昇っていくのだ。
この苦しい生き物は、私がその感情を覗き、受け止めることで救われる。平たくいえば成仏するとでもいうのだろうか。
嫌な感情を突きつけられるけれど、それでもこの生き物が救われるならと、私は中学生になるまでこの生き物たちに触れていた。
665人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
雛形(プロフ) - hiyoriさん» hiyoriさんコメントありがとうございます!凄いと言っていただけて本当に嬉しいです…!私の場合小説を作る時はテーマを決めて大体のプロットを立ててから書き始めています。1話1話はそれに沿うように勢いで書いて推敲して、というような感じですね! (2022年10月3日 8時) (レス) id: 75869cdb85 (このIDを非表示/違反報告)
hiyori - 凄いです😭 どうやって小説は作るんですか? (2022年10月2日 22時) (レス) @page5 id: 3185205e6c (このIDを非表示/違反報告)
雛形(プロフ) - アキさん» アキさんコメントありがとうございます!他の小説も読んでいただいた上にさらにコメントまで!本当にありがとうございます!嬉しすぎて転げ回ってしまいます…!不定期更新になりますがこれからも頑張りますね! (2022年9月30日 1時) (レス) @page29 id: 75869cdb85 (このIDを非表示/違反報告)
アキ(プロフ) - 主様の書く小説どれもドストライクすぎます😭💕💕 (2022年9月23日 1時) (レス) id: 011262e667 (このIDを非表示/違反報告)
雛形(プロフ) - 春雪さん» コメントありがとうございます。見直したのですが名前変換できない部分が分からず、念の為更新したのですが現在も変換出来ない様でしたらどの文章の所か教えて頂けますでしょうか…?本当に申し訳ありません💦 (2022年7月24日 23時) (レス) @page9 id: 75869cdb85 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:雛形 | 作成日時:2022年1月26日 19時