chapter.01* 提灯に釣鐘 ページ1
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“ 続いてのニュースです。十四年前、愛知県岡崎市内の住宅に放火し、一家五人を殺害したとして現住建造物等放火や殺人などの罪に問われた茅ヶ崎死刑囚の死刑が名古屋拘置支所にて執行されました。”
７時２５分。テレビから漏れ聞こえる甲高い声に視線を移す。
感情を含まず原稿を読み上げる女性は、最近やけにテレビで見かける人気急上昇中のアナウンサーだ。クラスの男子がよく話題にしている。
昔、市内で放火殺人が起こったという話はこの辺に住んでいれば一度は耳にしたことがある、世間を震撼させた事件だった。
とはいえ、同じ市内といえども範囲は広いし、殺された人達は気の毒だけど、所詮どこかの知らない誰か。毎日のように報道される事件となんら認識は変わらない。
軽く聞き流して、歯型のついたトーストに再び齧りつく。
「あ、」
視線を落とすと、知らぬ間にパジャマの裾が紅く染まっていた。テレビに気を取られていた隙に、はみ出る程たっぷりと塗りたぐったイチゴジャムが零れ落ちたのだろう。
やらかした。また、小姑のように説教する廉が目に浮かぶ。なんとか誤魔化そうと必死で擦ってみるけれど、跡は消えるどころか余計に広がっていく。
『えー、また汚したん？』
分かりやすく呆れた声が背後から近づく。一足先に朝食を済ませ制服に袖を通した廉の視線は、案の定汚れたパジャマに注がれる。
よりによって買って貰ったばかりの新品。おまけについ数日前に同じ過ちを犯したところだ。
その時はマーマレードだったけど。なんて、そんな屁理屈を言ってる場合じゃない。
今回ばかりは何を言われようとも、反論の余地がない。これじゃ、毎日のように廉にドジだとか、おっちょこちょいだとか馬鹿にされても仕方がない。
「ごめんなさい。」
『しゃあないなぁ。洗っとくからはよ脱いで？』
珍しく素直に謝る私に強く出れなかったのか、特に叱ることも愚痴を零すこともなく、着替えの制服と引き換えに脱いだパジャマを静かに洗面所へ持ち去っていった。
なんだかんだ私に甘い。
『あのくらいやったらすぐに落ちるけど、もう零すなよ。』
「うん。ごめんね。」
『もうええよ。夜には乾くと思うで。まあ、次汚したらたっかい肉でも奢ってもらうわ。』
「それは勘弁！私お小遣いないのに、鬼だ。」
『ふは、冗談やって。』
永瀬廉。一つ上の兄兼保護者。
この世で唯一、私に愛情を注いでくれる人。
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恋(ren)(プロフ) - sakiさん» ありがとうございます。マイペースな更新になりますがお付き合いいただけると嬉しいです！ (2020年3月18日 4時) (
レス) id: 4779cb5bc5 (このIDを非表示/違反報告)
saki(プロフ) - めっちゃ面白かったです！！続き楽しみにしてます♪ (2020年3月17日 23時) (レス) id: 6230179af3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：恋(ren)
| 作成日時：2020年2月15日 0時
