うさぎのひとまわり２ (ページ5)

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おむらいすページ5

「家にいるより捗る」

土曜の朝、そんなメッセージが届いたかと思うと、インターホンが鳴った。俺が家にいなかったらどうするつもりなんすかね。

「泊まんの？」
「あー、だめだった？」
「いいけど」

慣れた足取りでA用のハンガーラックに持ってきた服をかけると、学生御用達のリュックから分厚い本とペンケースが出てきた。

「俺まだ寝起きなんだけど」
「知ってる、寝癖ついてるよ」

よっ、と背伸びをしたAの手が後頭部の寝癖に触れた。背伸びをしなくても届くだろうに微妙に背伸びをするあたりずるいと思いません？

「朝ごはんまだ食べてないの？」
「作んの面倒だしフルーツにしようかと」
「じゃあ作ったげよう！」

参考書をテーブルの端に積み上げると、スキップ混じりでキッチンへ。今日はなんだかご機嫌だ。

「今日は朝から元気っすね」
「今週はしげくんに会うために頑張ったからね！」
「約束してなかったのに？」
「だって今日釣り行かないだろうなって思ってたし」
「なんで」
「仲良い船長さん体調悪いんでしょ？」
「なんで知ってんの」
「ブログに書いてあった！」

なんでそこまでチェックしてんの、俺に聞けばいいのに。

「俺に聞けばいいのに、って思ったでしょ？」
「あー、うん」
「突撃した時のしげくんの顔が見たかったんでーす、だいせいこーう」
「それは恥ずい」
「ふへへ」

慣れた手つきで溶いた卵をフライパンに流してオムライスを作っている。
冷凍ごはんってほんとに便利。

「あれ、Aも食べんの」
「こうなること予測してたから抜いてきた」
「読まれまくりかよ」

テーブルに並んだ2つのプレートには黄色のとろとろの卵と、お絵描きをするようなタイプじゃないから普通にかかってるだけのケチャップ。

「美味しい？」
「美味いよ、てかAって料理できたっけ」
「オムライスしか作れない」
「なんで」
「……言わない！」

俺がオムライス好物だって知ったからかな、ってちょっと思ったりしてるけどもしかして正解だったりすんのかな。

「今度他の料理教えてやんよ」
「ほんと？たのしみ！」

まぁきっとほとんど俺が作るんだけど。
一緒に参考書を覗き込むのも、一緒にキッチンに立つのも、悪くないと思うんだ。