うさぎのひとまわり２ (ページ16)

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○かぜっぴきページ16

完全にやらかした。

センター試験が終わって2週間。
少し疲れたのかなぁと思いながら、無理して生脚で膝上スカートを履いていたのが悪かったのかもしれないけれど、見事に体が重い。

高校生といえども18年は生きているのだ。
この身体のだるさが、発熱によるものだということぐらいわかっている。このまま勉強したところでできないこともわかっている。

「できるだけ早く治しなさいよ」
「お母さん今日仕事なの」
「土日のシフト休めないんだから仕方ないでしょ」

バタバタと出て行く母親が玄関の鍵を閉めた音を聞いて伸びをひとつ。病院に行くのは面倒だけど、このまま長引くのもさらに面倒。

……寝れば治るか。

目を覚ましたら熱が下がってますように、と思いながら目を閉じた。

.

玄関のドアが閉まる音で意識が戻った。
まだ外は明るい。お母さん早引きでもしてきたのかなあ。

「A、起きてる？」

頭上からしげくんの声がする。
いやまさかね。さてはまだ夢見てるんだな。

「っわ！」

おでこに冷えピタみたいな冷たさが乗って、一気に目が覚めた。視線の先には幻聴だと思ったしげくん。そしておでこに乗ったのは冷えピタで間違いなかった。

「起こした？よな、ごめん」
「え、なに」
「わりかし元気そうね」
「いや、なんで」
「お母さんから連絡もらった」
「連絡先は…」
「お盆に交換したんだよね」

そういえば仲良かったかも。
慶くんに紛れてたけど。

「熱あんの？」
「37.6度ぐらい」
「割とあるな、なんか食える？」
「お腹空いてる」
「じゃあなんか作ってくるわ」
「うどんの卵乗せがいい」

部屋を出て行く背中がちょっと寂しいと思いながらも、また布団に潜り込む。しげくんの料理食べるのいつぶりかなあ。そんなことを考えながらぼーっとしていたら、とてもいい匂いがしてきて、ベッドから這い出る。

ダイニングテーブルに並べられたいかにも病人食なうどんは、ほかほかと美味しそう。

「飯食ったら熱測れよ」
「うん、さっきよりだるくない」
「でも早く治さないとあと2週間ぐらいだろ？」
「やってもうたよね」
「まぁ受験日じゃないからマシじゃん」

向かい合わせでずるずるとうどんをすすりながら、しげくんがいてよかったなあと心から思う。

「しげくん」
「ん？」
「すきだよ」
「ん、知ってる」

早く食え、は照れ隠しのひとつ。