うさぎのひとまわり２ (ページ11)

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どらいぶ 2 ページ11

「久しぶりに助手席乗ったなぁ」
「いつ振りだろうな」
「全然覚えてない」

午後から塾の日はうちに来るっていう決まりも4回目で(俺の仕事のせいで)あっさりなくなってしまったし、さっきも言ったみたいに連絡すら取っていなかったんだから寂しかったのはきっとお互い様だ(と思いたい)。

「なんかもうすっかり寒くなったよね」
「こないだまで車の中でクーラーつけてたのにな」
「クーラーって単語だけで寒いんだけど」
「意味わかんないんだけど」

どう遠回りしようかなと思っていたら、スタバの新作を飲み逃してるから飲みたいと言い出したA。
これあれだよな、俺が奢ってくれるからだよな。
わかりやすいけど、のってあげる。

「よくそんな甘いもん飲めるな」
「飲んでみれば？意外といけるかもよ」
「いやもうそのクリームの量が無理」
「私もそこまで得意じゃないけど飲めてる」
「絶対胃もたれするやつ」
「それは歳だね」
「悪かったな」

ちょっと悔しくなって、信号待ちのタイミングでAの右手にあったそれに口をつけてみた。
飲みたかったというより反応が見たかっただけだけど。

「え、まって、なに突然」
「びっくりした？」
「間接キスだしがっつり！」
「今更気にすんの、それ」
「……いや、まぁ、そっか」

恥ずかしそうにしてるAの赤くなった耳に触れるともっと赤くなる。

「しげくん、青だから！」
「はいはい」

知らないと思うけどね、片手でも運転はできるの。

「ちょっと耳触んないで」
「キスするのは我慢してるんだから」
「くすぐったくて零しそう」
「あ、それは困るわ」
「はいやめたやめた」

もうすぐAの家の近く。
この景色見るのも久々かもしれない。

「ありがとね、わざわざ」
「ちょっとまって」

降りようとしたAの手を引いて、短いキス。
合ってしまった目がちょっと恥ずかしい。

「辛くなったら連絡していいから、な」
「なんだ、バレてるんだ」
「俺も12年前は同い年だからな」
「そっか、私6歳だ」
「そんなところで若さアピールすんなよ」
「へへ、ありがとね」

これでもう少し連絡が増えるといいのだけれど。
家に戻るAの背中を見送りながら、可愛かったな、と呟いてしまったのは何年後かに教えてあげよう。