【短編集】星に願いを、花に思いを。 (ページ10)

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「そうだなぁ、お菓子作り関連と言えば、茶葉とか、あと、アロマなんかも良いんじゃないかな」

アロマ。…そう、言えば。彼からはいつもなんらかの良い匂いがしていた。
お菓子作りをしてた時は、甘ったるい匂い。そのほかの日は、柑橘とか、花の香りとか………。

「で、も………。私あの人の好きなアロマの香りとか知らないし………」
「もー、そんなの知ってたら変態さんになっちゃうよ…君の軍の司令官さんみたいな」
「そっ、…………れは嫌だな………」

なんていうか、精神的と生理的に。

「じゃあ…………アロマキャンドルでもあげようかな………」
「ふふっ、良いと思うよ」
「なにを選んでもそう言うくせに………」

ため息が一つ。それは甘い香りに溶ける。
存在感の薄い彼女は、この甘い香りに飲まれてしまいそうな危うさの中、また一つ、彼から貰った沢山あるアプリコットジャムのビスケットを一口食べる。

「なにをあげるのか、楽しみだなぁ。あげた日は言ってね？」
「………なんで？」
「だって、」

きっとあの人なら、その日一日凄く嬉しくて、お菓子沢山作りそうじゃない？と、凄く嬉しそうな笑顔で紫はカップを持つ。

「……………」

そこはすぐ使うからわかる。じゃないのか。………でも、あの人も贈り物は大切にしそうなタイプだし……。

「やっぱり、すぐ消化出来るようなものにしなきゃ………」
「えー、良いと思うのに。アロマキャンドル」
「いや、だって……、流石に、ずっと持ってもらうのは、恥ずかしいな………」

何故、何故こんなにも悩むのか。
それは

……一欠片でも良いから、無償の慰めのお返しをしたかった。

…………甘い香りに酔ったのか、思考が上手くいかない。………やっぱりアロマキャンドルはやめたほうがいいかもしれない。

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