昔から変わらず。/おりうら ページ8
「おーい! せんらくん!」
「あ! Aちゃん」
昔から気の弱かった彼。
よく男の子にからかわれることがあって、その度に私が助けてあげていた。
男何人かに言い返すことも出来ないのか。って呆れつつもせんらは私が守らなきゃ。なんて使命感を抱いていた。
そんな彼も大人になった。
今ではすっかり格好の良い男性になった。
街ゆく人達の視線を度々集めて、ついには声までかけられていた。
隣に私が居るのに赤の他人に連れられて話をしている。
そういう所も昔から変わらない。
優しいから話しかけられても断ることが出来ずに、したくもないことやらされたり、長話することになったり。
「...。」
立ったままいるのも疲れてもう地面にでも座ってしまおうかと思った。
そんな時、
「ごめんA...」
「はぁ、やっと終わったのー?」
「うん...あの人達何かしつこおしてきて...」
「ふーん」
疲れ気味な彼に対してわざと不貞腐れた態度を取ってみると
「ほんと! ほんとごめんな?」
と言いながら両手を合わせて必死に謝ってくる。
ほんとに昔から変わらない。
その言葉も何回思ったことだろうか。
「ふふ、仕方ないなー。許してあげる」
「...Aは優しいなぁ」
「千羅の方がよっぽど優しいと思うけど」
「そんなんあらへん!」
どうしたの、そんな真面目な顔して。
ちょっとかっこいいなって思っちゃったじゃんか。
「Aは言わなあかんことはしっかり言うとって肝心なところで何も言えへん俺とは大違いや」
...分かってないなぁ。
千羅は昔から縁の下の力持ちって感じで、皆の見えないところで皆を支えてた。
どんどん前に出ていく私と違って千羅はあまり前には出てこない。
だからこそだったんだろう。
勿論私はちゃんと見てたよ。
だから好きになったの。
千羅のことだからきっと分かってないだろうけど。
それにそんなこと恥ずかしすぎて言えないし。
「...ほんと千羅って、昔から変わんないね」
「え、それってどう言う意味!?」
「教えなーい」
「え、何でやぁ...!」
「別にいいでしょ、良い意味だからそんな焦らなくて大丈夫! ほら、行こ!」
「うぅ...」
不安になると焦るところも
「千羅」
「なーに?...!?」
彼の頬にキスをすると真っ赤なタコさんみたいになるところも
全部
「...好きだよ、千羅くん」
昔から変わらない。
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作者名:参加者一同 x他1人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/seyu/
作成日時:2018年9月29日 11時