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『よ、』
「っ、」
少しピリついた気持ちで歩いていると、給湯室からコップを持って出てきたのが岸で、驚いて思わず足を止めた。
「びっくりした…、おつかれ」
『おぅ、おつかれ!……おい、』
「?」
コップを持っていない方の手で、彼は私の肩に手を置いた。
置かれた所が熱い。
会いたくないとまで思っていたのに、会えたら会えたで嬉しくて彼を見つめている。
『ちょ、お前、血出てる…っ』
首の後ろの方を覗き込んだ彼は、それに気付くと、『ちょっと待ってて』と急いで何処かに行ってしまう。
早足で戻ってきた彼は、私を通路の端に寄せた。
『髪、ちょっとどかして』
「え?」
『血出てる』
素直に髪を片側に退かすと、持ってきてくれたのであろう絆創膏を私の首に貼り始めた。
…どうしよう、嬉しい。のに、切ない。
『この傷なに?どうしたの?』
「え?あぁ…うん、ちょっと資料室で」
『落ちてきたとか?』
「うん…まぁそんなところ」
『俺を呼べって言ったろ?』
…呼べるわけないじゃない、
貼り終わると、絆創膏の上から、2回ほどポンポンと患部を撫でて『はい、終わり』と言う。
絆創膏のゴミをクシャクシャと丸める音にまで、キュンとしてしまって仕方がない。
「あ、ありがと…」
『何かあったら言えよ?』
「うん…」
『それに、何か元気無いみたいだし』
「…」
『話聞くくらいならできるからさ』
じゃあな、と戻って行ってしまう彼の背中を見つめた。
あぁまったく、彼はズルい。本当にズルすぎる。
彼の行動は悪気がないからまたズルい。
勝手に、好きになった私が悪いのだから。
「っ、」
「あ、先輩っ」という内田さんらしき声が聞こえた。
それに反応する岸の声も聞こえた。
私は、1歩を踏み出した。
その背中を追いかけた。
『ぅお、びっくりした…どした?』
名前を呼び、肩を揺らして振り向く彼。
「今日、ご飯。」
返事も聞かず私はそのまま彼を置いて、今度は彼に背を向けて歩き出した。
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ash(プロフ) - 涼杜兄妹さん» いつも楽しみにしてくださってありがとうございます! (2020年6月16日 23時) (レス) id: 8c76b61c28 (このIDを非表示/違反報告)
涼杜兄妹(プロフ) - 後輩ちゃんに敵意が出てきました(笑)主人公ちゃんがんばれ!岸くんは怪我とか元気ないの気付けるのに…ちょっと惜しい!気付いてあげて!! (2020年6月15日 23時) (レス) id: 400e48a6ce (このIDを非表示/違反報告)
ash(プロフ) - 涼杜兄妹さん» 焦ったさを伝えられてよかったです!!いつも温かいコメントありがとうございます、今後もよろしくお願いします!^ ^ (2020年6月15日 19時) (レス) id: 8c76b61c28 (このIDを非表示/違反報告)
涼杜兄妹(プロフ) - まさかのすれ違いー!!!ものすごく焦れったいです!岸くん玄樹くんや後輩ちゃんじゃなくて主人公ちゃん第一に動いてあげて!!どうなるのか今後も楽しみです♪ (2020年6月14日 17時) (レス) id: 400e48a6ce (このIDを非表示/違反報告)
ash(プロフ) - 涼杜兄妹さん» ありがとうございます!お待たせしてすみません(汗) 楽しんでいただけているようで本当に嬉しいです^ ^ (2020年6月14日 15時) (レス) id: 8c76b61c28 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ash | 作成日時:2020年5月17日 11時