可愛くねぇ奴。- 2 -

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「え、出張？」



朝から雨が降っていたある日、社内ですれ違った岩橋くんにそう告げられた。



「うん、今日からね」
「そうなんだ…」



見かけないと思っていたら、岸はどうやら今日から出張らしい。



「5日間だって」
「そうなんだ」



心の準備期間もなく、突如会えなくなってしまった事実に、心の中で肩を落とす。
5日いう時間が恨めしい。

…出張なら言ってくれたらよかったのに、なんて、彼女ヅラ。



「誰と行ってるか気になる？」

「え？」

「あれ、違った？」



顔にそう書いてあると思ったんだけど、と岩橋くんが自分の頬を2回ほどつつく。



「うちの部署の、後輩の内田ちゃんだよ」

「内田さん…」

「急な出張だったらしいけど、まぁ2人はいつも普通によく話してるし、あの2人だったら大丈夫そう」




内田さん。

よりによって、愛嬌のある真っ直ぐで可愛らしい子。

私は夜の仕事を長年してきて、人を見る目には自信がある。そんな私が見ても、内田ちゃんと呼ばれているその子は、偽りなく真っ直ぐで自然な愛嬌がある可愛らしい子なのだ。




「そっか〜、でも急に5日間も出張なんて大変だね？」




大変だね、なんて労うフリをして、内心は深い嫉妬と、大きな不安。


私と違って、秘密や嘘で固めていない子なんて
色で例えれば、まさに白な子なんて
空で例えれば、昼間の青い空の様な子なんて…




「…早く帰ってきてよ」




岩橋くんと別れ、思わずトイレに逃げ込んだ私はそう呟く。








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