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デスクの上の携帯が着信を知らせた。

画面には“ 淳太”
お店のオーナーの名前が表示されていた。


オーナーは、会社で私がしているもう1つの職業を秘密にしていることを知っている。だからこそ今、真昼間に淳太から電話がかかってくるなんてよっぽどのことなのかもしれない。




「ごめんなさい、少し電話に出てきますっ」
「はーい」


画面をタップして耳に当てる。


「ごめんちょっと待って。」




そう小さく呟いて、携帯を握りしめて非常階段に続く扉を開ける。滅多に人が通らないここは秘密の電話に最適だ。




「ごめんお待たせ」

『ううん、大丈夫』

「どうしたのこんな昼間に。何かあった?」

『悪い、今日早くて何時に出勤できる?』

「18時が定時だから…、着替えとか準備含めても頑張って19時30分とかかな」

『だよな…、今いつもAを指名する田中さんから電話が来ててさ、どうやら今日は田中さんの都合で夜遅くまで入れないみたいやねん。
だから出来るだけ早くAを指名してずっと着いてて欲しいって言っててさ』

「田中さんは何時退店予定?」

『19時30分』

「…分かった。」

『え?』

「今田中さんと電話繋いでる?」

『うん、保留にしてる。今答え聞きたいって言うてて…』

「じゃあ伝えて?料金は通常の2倍だけど、出勤前に会えますって。」

『いけるん?無理はせんでいい。』

「やるしかない。しかもそうすればいただけるお金も2倍よ?」

『ホテルは無しだから、そっちの方に誘われたらすぐ連絡しろよ?』

「うん、分かってる」

『…………今聞いたらそれでOKやって。』

「じゃあ今日お店に出勤するのは20時くらいになると思うから」

『店に来る時はタクシーでええから』

「ほんと?」

『お前を1人で歩かせたくないしな、お前すぐ声かけられて危ないから』

「あはは、淳太は優しいなぁ」

『じゃあ疲れてるのに悪いけど今日は頼んだ』

「了解」

『今日お得意様が多いから頑張ってな』

「今日はアフター無しでいい?」

『もちろん、俺はもともと賛成してへんし』

「そうだったね」





電話を切って気合を入れる。

ただでさえ今日は、デスクの仕事も多くて体力を削られている。
それに加えてお得意様の出勤前接待、その後はお店に直行してお店に来てくれるお得意様達の接待。
…アフターが無いことだけが救いだ。


グググ、と体を伸ばして非常階段を出る。






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_____あのっ、






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作者名:ash | 作成日時:2020年1月20日 21時

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