検索窓
今日:1 hit、昨日:4 hit、合計:135,675 hit

7 ページ8

.





kishi▷▷





Aさんが降りて2人になった車内。

助手席に座る俺と、斜め後ろの後部座席に座る岩橋。

Aさんがいた時とはうって変わって車内は静かだった。
ただ、Aさんの香水の香りがほんのりと車内に残っていた。



「Aさんと仲良くなれた?」
『え?』



バックミラー越しで岩橋を見ると携帯をいじっていて、俺のことは見ていなかった。



『どうだろ。まぁ、最初よりは気が楽になったくらいじゃね?』
「ふーん」



___俺もAさんの隣で喋りたかったな。




小さく聞こえた呟きに、俺はもう一度バックミラー越しで岩橋を見た。
相変わらず俺のことは見ていなかった。



『お前モテすぎなんだよ』
「…べつに頼んでないし」
『うっわ、今のはモテない奴に喧嘩売ったわ』
「来てくれるのはありがたいけど、俺が話したいのはAさんなんだもん…」

『Aさん、お前のこと言ってたぞ』
「へ?!なんて?!」
『岩橋くんモテモテですよね〜って』
「他には?!」



ガバッ、という効果音が聞こえてきそうだ。

バックミラー越しでまた岩橋を見ると、今度は俺を真っ直ぐに見ていた。



『他にはって…それだけだけど』
「なぁんだ……」



シュンとした様子で前のめりだった体勢を崩して、椅子の背にうだっと寄り掛かった。



「いいなぁ、岸はAさんと話せて」
『たまたまだよ』
「Aさんすっごい楽しそうだった」
『気のせいだよ』
「気のせいじゃないもん。俺分かるもん。」



ぷくっと頬を膨らます岩橋。



『俺の歓迎会だし気遣ってくれたんだよ』
「そうじゃないもん。あれはめっちゃ楽しそうにしてた。」
『てかお前あんなに囲まれてたのに見てたのかよ』
「当たり前じゃん」
『器用だな、すげぇ』



…柄にもなく緊張したことは言わないでおく。

そりゃそうだ。あんな綺麗な人と話すのなんて緊張するに決まってる。

やっぱりあの人には人を寄せる魅力がある。



「俺はあんな風に楽しそうな顔させてあげたことない」
『あるよ絶対、何回か飯行ったんだろ?楽しくなかったら断るだろ』
「でも…」
『そんだけモテるんだから自信持てよ』
「だーかーら」
『あーはいはい、Aさんにモテたいのね』
「そ。」



ミラー越しで見る岩橋は、携帯を閉じて外を見ていた。
窓に映る彼の顔は少しだけ切なそうだった。






.








.

8→←6



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (170 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
324人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ash | 作成日時:2020年1月20日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。