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kishi▷▷
Aさんが降りて2人になった車内。
助手席に座る俺と、斜め後ろの後部座席に座る岩橋。
Aさんがいた時とはうって変わって車内は静かだった。
ただ、Aさんの香水の香りがほんのりと車内に残っていた。
「Aさんと仲良くなれた?」
『え?』
バックミラー越しで岩橋を見ると携帯をいじっていて、俺のことは見ていなかった。
『どうだろ。まぁ、最初よりは気が楽になったくらいじゃね?』
「ふーん」
___俺もAさんの隣で喋りたかったな。
小さく聞こえた呟きに、俺はもう一度バックミラー越しで岩橋を見た。
相変わらず俺のことは見ていなかった。
『お前モテすぎなんだよ』
「…べつに頼んでないし」
『うっわ、今のはモテない奴に喧嘩売ったわ』
「来てくれるのはありがたいけど、俺が話したいのはAさんなんだもん…」
『Aさん、お前のこと言ってたぞ』
「へ?!なんて?!」
『岩橋くんモテモテですよね〜って』
「他には?!」
ガバッ、という効果音が聞こえてきそうだ。
バックミラー越しでまた岩橋を見ると、今度は俺を真っ直ぐに見ていた。
『他にはって…それだけだけど』
「なぁんだ……」
シュンとした様子で前のめりだった体勢を崩して、椅子の背にうだっと寄り掛かった。
「いいなぁ、岸はAさんと話せて」
『たまたまだよ』
「Aさんすっごい楽しそうだった」
『気のせいだよ』
「気のせいじゃないもん。俺分かるもん。」
ぷくっと頬を膨らます岩橋。
『俺の歓迎会だし気遣ってくれたんだよ』
「そうじゃないもん。あれはめっちゃ楽しそうにしてた。」
『てかお前あんなに囲まれてたのに見てたのかよ』
「当たり前じゃん」
『器用だな、すげぇ』
…柄にもなく緊張したことは言わないでおく。
そりゃそうだ。あんな綺麗な人と話すのなんて緊張するに決まってる。
やっぱりあの人には人を寄せる魅力がある。
「俺はあんな風に楽しそうな顔させてあげたことない」
『あるよ絶対、何回か飯行ったんだろ?楽しくなかったら断るだろ』
「でも…」
『そんだけモテるんだから自信持てよ』
「だーかーら」
『あーはいはい、Aさんにモテたいのね』
「そ。」
ミラー越しで見る岩橋は、携帯を閉じて外を見ていた。
窓に映る彼の顔は少しだけ切なそうだった。
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作者名:ash | 作成日時:2020年1月20日 21時