可愛くねぇ奴。 (ページ43)

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あなたの趣味だって知ってる、好みだって。
付き合っていたのは何年も前のことだけどちゃんと覚えてる。

話を合わせられるのなんて当たり前だ。

どれほど時間が経っただろうか。
案の定話は盛り上がり、緊張していた彼の顔も、少しずつ素の顔になってきて
その姿に喜びと、切なさを覚えた。

「源氏名さん…なんかいい香りします、俺の好きな香り」

「よかったです、私も好きな香りなんです」

「大人っぽくてすごく落ち着いてる源氏名さんにピッタリですね」

この香水はあなたが好きだから。
いつ指名が入ってもいいように常にポーチに入れていたものだ。

「そんな褒められると恥ずかしいですよ」

美容室に通いつづけた艶髪を耳にかけちゃったりして。
ほら、こういうピアス、好きでしょ？

「ピアスも可愛い…」

揺れるピアスにそっと指を当てる彼。

…ひどく懐かしい。

「…何でこんなに俺好みなん…」

「ぁ…関西弁…」

関西弁…、なんて私こそ白々しいこと言って。

この人が関西弁なんてとうに知っているし、毎日毎日聞いていたのだから新鮮味なんてこれっぽっちもない。

知らないふりをして別の女のフリをする。

「あ…」

「永瀬さんの関西弁聞けちゃった」

「わ、何で出たんだろ、恥ずかしいな…」

「素敵ですよ、関西弁好きです」

ここの好きは思い切り想いを込めた好きを。

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