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「軽くだけど朝食あるよ、食べる?」
「ん、」
「コーヒーもちゃんと淹れておいた」
「ふは、さすがやな」



グググ、と体を伸ばして立ち上がる。
洗面所に行く前にふらっと私の所にきて、ふわりと頭を撫でて行った。

戻ってきた淳太にコーヒーを出しテーブルに向かい合う。



「いただきます」
「いただきます」



私は2日酔いの体に優しいスープをスプーンですくった。



「珍しいな、Aが酔うん。」



コーヒーをすすりながらチラリと私に目をやる淳太。



「ふは、確かに」
「何かあったん?」
「…」



窓の外を見てやっと気付いた。
雨が降っている。



「“ あの人 ”が目の前に現れちゃった」
「は…」
「情けないよね、見下したいと思ってる人に会っちゃったら、呆気なく動揺して酔い潰れて。」



カシャン、とカップを置く音とひどく驚いた様子の淳太。



「確かに昨日は来てたで…?でもお前の所にはまだ行けないやろ」

「あの店って結構複雑じゃない?道に迷ってどうやらブラックカーペットのところまで来ちゃったらしいの」

「そういうこと…、だとしてもタイミング悪すぎるやろ…」

「そうだね」



私はスープの湯気を見つめながら、スープをゆらゆらとかき混ぜた。



「よかったら、」
「え?」



「よかったら俺の名前覚えておいてくれませんか、だって」



スープをかき混ぜながら「なんだそれ」と毒を吐く。

淳太はいつの間にか私の隣にいて、椅子に座る私を抱きしめた。

私は構わず、「何が覚えててください、よ。右手にペアリングして、ムカつく。」と毒を吐く。

淳太は私の頭を壊物を扱うように撫でた。




私の視界はぐにゃりと歪んで、スープを混ぜる手も、スープの様子も分からなかった。




雨が窓に叩きつけられる音だけが、虚しく広い部屋に響いた。






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作者名:ash | 作成日時:2020年1月20日 21時

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