可愛くねぇ奴。 (ページ5)

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kishi ▷▷

「おかえり」
『おう』
「Aさんいた？」
『うん。いろいろ説明してもらった』
「そっか」

もらった資料を手に、椅子をひく。

『言ってた通りだな』
「え？」
『すげぇ綺麗な人だな』
「でっしょー？あ。好きになっちゃダメだからね！！」
『はいはい』

俺の隣のデスクでデレデレな顔をしている岩橋は、どうやら本当に隣の部署のAさんが好きらしい。

俺と岩橋は高校からの同級生だが、こんな顔をしている岩橋は見たことがない。
相当Aさんに惚れているのだとすぐに分かった。

今まで俺はここの階から上に3階上った所にある部署にいた。
そしてつい昨日、移動命令でここの部署に来た。

岩橋の圧倒的人気と、Aさんの爆発的人気は、噂話に疎い俺でも知っていた。それほどあの2人は有名だ。
ただAさんを見たことは今まで無かった。
岩橋は数回Aさんと食事に行ったことがあると言っていたから、撮った写真見せてよ、と何回も言ったが岩橋はダメだと言って見せてくれなかったのだ。

今日、初めて見たAさんは俺の想像なんてはるかに超えてくるほど綺麗な人だった。

人見知りをしない堂々とした受け答えで、優しい話口調が相手の緊張を解く。
ふわりと香る香水がさらに彼女の魅力を引き出していた。
この人には、人を寄せ集める魅力があると思った。

ふいに目があった時、少しびっくりしたような顔をしていたのはなぜだろう。

…もしかして俺の顔に何かついていたのだろうか。

『岩橋』
「んー？」
『俺の顔に何かついてる？』
「ついてないよ？どしたの？」
『何かついてるかなーって思って』
「でた。岸の天然発言」

どうやら俺は天然らしい。

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