全てを捨てて、ここに来て - 3 -

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顔にべったりと偽物の感情を貼り付けたまま、私は仕事に没頭した。






“ 「あんな事、気にしなくてええからな」

「はい、あんなの慣れなきゃですから全然大丈夫です」 ”






なんて、時折笑顔を浮かべていた自分が怖い。

どこからその笑顔が来たのか分からない。

自分で自分が、今どんな顔をしているのか分からない。





「お疲れ様でした」





久しぶりに定時で上がれた私は無心でエレベーターに乗り、1階を押し、ただぼぅっと着くのを待った。







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「………ぁれ…？」






私は確かに、家に向かって足を進めていたはず。





それなのに、今目の前に広がっている景色は
紛れも無くバーに続く1本道だった。






「…」






どうして私はここにいるのだろう。






「…」






道の先の行き止まり、そこにバーはある。

今日もオレンジの光がぼぅっと漏れている。






「…」






私は、今日を酒で潰そうとしたのだろうか。

酒の力を借りて忘れようとしたのだろうか。




だとしたら何て情けない。




酒に頼るなんて、酒で忘れようとするなんて
自分を甘やかすのと同じだ


この先今日みたいな日はきっとくる。


甘えるな


私は、刑事なんだから


エースなんだから


こんな弱くなっててどうする


何が辛いだ


甘えるな


いつかこの貼り付けた顔が本当の顔になればいい





「…」






私はもう少しで着くバーに背を向けた。






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『_____あれ、Aさん？』






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停止ボタンを押されたようにピタリと足が止まった。

そしてゆっくりと、振り返った。






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『_____おかえり、Aさん』






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