全てを捨てて、ここに来て - 2 -

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nozomu▷▷






言うだけ言って勢いよく切ってしまった電話。
携帯を握りしめたまま、俺はベッドに体を投げた。




『気にしてや…』




こんなにAさんのことを気にしてしまっているのに。

そして俺はまた、気持ちが一方通行だという事に気付く。




『はぁ…』





俺の事を考えてもらうにはどうしたらいい？

ハグでダメなら、キス？

…いや、こういう思考があかんねんって。
淳太だったら絶対しないし。






『……ん？』






握りしめた携帯が、手の中で短く震えた。


ロック画面には、俺がどうにも気にしてしまうAさんからのメッセージがあって
「おやすみ」と犬が布団に入っているスタンプが表示されていた。


あんなガキみたいな電話の切り方をしてしまったのに、ちゃんと最後まで返してくれるAさんは優しい。






『……って、俺……』







今日俺は、初めてAさんの仕事を聞いた。

どんな仕事で、どれだけ大変な仕事で、どんなリスクがあるか聞いた。

Aさんがどんな思いで仕事をしているのかにも改めて気が付いた。



それなのに俺は…







『……最っ低や…』







今日だって急遽呼ばれて仕事に向かって、休日なのに仕事して疲れているはず。

それなのに一方的に電話をかけて、一方的に電話を切るなんて子供みたいな事をして…

Aさんの少ない休憩時間を俺は無駄にしてしまったかもしれない。




仕事からさっき帰ってきたのに、俺の事を気にしろなんて…

仕事優先に決まってるやろ、俺の事なんて二の次三の次でええねん、分かるやろ俺！！







『……あぁごめんなさい…』








Aさんの場所になりたいのにな。




……淳太だったら

いや、そう考えるのはやめよう。
次気をつければええねんから。





次こそは、Aさんにとって居心地のいい場所になろう。








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