全てを捨てて、ここに来て - 2 -

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『行きましょ！』

「うん」





お店を出ると、まだ少し肌寒い春風がふんわりと髪を揺らす。





『わ、今日星綺麗っすね』

「ほんとだ、綺麗…」





空を見上げると、思っていた以上に星が輝いていた。

首の角度はそのままで、目線だけ横に少しズラすと
私と同じように空を見ている小瀧さんが見える。




あぁ…やっぱり好きなんだな……




そしてまた、ゆっくりと歩き出す。






『今日も仕事忙しかったですか？』

「うーん、ちょっとね？でも全然大丈夫」

『あんまり無理したらダメっすよ？』

「うん、ありがと」





ゆっくりと歩いているはずなのに、あっという間に最後の角まで来てしまう。

もう少し一緒にいたいのに。





「じゃあ…、送ってくれてありがとね」

『あ、Aさん』





バイバイ、しかいつも言えない私だから
私の名前を呼んでくれると、少しだけ一緒にいられる時間が増えて嬉しい。


また柔らかい夜風が吹いて、今度は小瀧君のあの香水の香りをふんわりと運んできた。



それだけで、胸の奥がキュンと鳴る。



自分が気づかないうちに、私は相当彼に恋をしているみたいだ。






「なに？」

『プレゼント、一緒に考えてくれたお礼にご飯行きませんか？』





思いもしなかったお誘いに、年上のくせに心臓が暴れている。


早く、早く返事しなきゃ


でも、きっと今声を発したらドキドキして震えてしまう




しっかりしろ、私。

私は 【鉄の女】なのだから。






「うん、ご飯、行こっか」

『ほんまですか？！ありがとうございます！』





私は上手く大人の女を演じられただろうか





「じゃあ、空いてる日連絡する」

『はい！』







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