全てを捨てて、ここに来て - 2 -

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私は大事をとった入院を終え、自宅に帰っていた。

入院を終えて更に2日間、職場から休暇をもらった私は、気晴らしにショッピングに出かけることにした。



平日のお昼時ということもあって、ショッピング街に向かう通りにはあまり人がいない。



みんな仕事しているのに…、という少しの罪悪感を感じながらも、私はショーウィンドーに飾られた服を眺めていた。





「…あれ、刑事さん？」





聞き慣れた職業名で呼ばれた気がして振り向くと、私を呼んだのは意外な人物だった。





「…え、西畑君？」

「やっぱり刑事さんや！」





携帯を取り出して日付を確認しても、今はやっぱり平日の昼間で。






「西畑君学校は？」

「あぁ、今日午前授業だったんです
だから学校帰りに友達とご飯でも食べて行こうかなって」

「なるほど…」




午前授業なんて懐かしい響きだ。




「刑事さんは今日お休みですか？」

「うん、そんなとこ」

「お1人ですか？」

「ん？うん、まぁ」

「僕、今日本当は友達と一緒に来るはずだったんですけど、今ちょっと友達が遅れてて…
もし時間あったらお話ししませんか？」

「うん、私も予定無いしいいよ、立ち話でよければ」





改めて見ると西畑君は制服で、若いなと思う。

17だもんね、そりゃ若い。





「これから来る友達って、前に刑事さんに話した友達なんです」

「あ、美容師になりたいって上京した子？」

「はい！」

「そっか、西畑君が絶賛するお友達がどんな人なのか私も気になるよ」

「すっごいイケメンなんですよ」

「そうなんだ」





美容師志望で、イケメン…

将来はイケメン美容師がいるってSNSで話題になるんだろうな





「…って、あ！今ちょうど来ました！」





私の後ろに西畑君は手を振った。



ちょうどお友達来てよかったね、と振り返った先にいたのは
見慣れた顔、なんてものじゃなくて。






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『悪い遅れ……た……』






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「こた、きくん…？」






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……私の好きな人だった。







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