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仕事を終えたある日のことだった。



「A、お疲れ」
「あ、お疲れ様です」



また明日、と退勤する濱田先輩に挨拶をして
もう一度携帯に視線を戻した。




【 これAのやんな?】




照史からそう送られてきた後の画像に写っていたのは、間違いなく私が無くしたと思っていたリップだった。


少し深い赤色のそのリップは、ずっと気に入っていたもので、無くしたと分かった時は相当ショックでしばらくポーチを見ては元気を無くしていたのだ。


照史が今家にいると聞いて、私はすぐに取りに行くと返信した。




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そして今、私は来慣れた照史のマンションの前にいる。



インターホンを押すと『今開けるわ』と照史の声がして、私は扉の前でふと携帯に視線を落とした。




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ガチャ




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「あ、夜遅くにごめ……、」

『っ、ビックリした……』




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扉が開いた音で顔を上げると、そこにはデニムにパーカーというラフなスタイルで扉を持つ小瀧さんがいた




「え、照史の家…」

『あ、俺はさっき照史から代わりに出てって言われて…』

「あ、あぁ、そうなん、ですね」




黒いスキニーに白シャツ、そして黒いエプロンの小瀧さんしか見たことが無かったから一瞬誰か分からなかった

だからだろうか、柄にも無く緊張しているのは。




「おー、A!いらっしゃい!」




奥から照史の声が聞こえて、小瀧さんが『どうぞ』と扉を開けてくれる。


ありがとうございます、と玄関に入るが
扉をおさえていてくれていた小瀧さんの横を通ると、あの香水の香りがフワリと鼻をくすぐって
何故だか分からないけど私は振り返って
彼を見ていた




『どうかしました?』

「え?あ、いえ」




「疲れてんのに来させてごめんなぁ」
「ううん、私が忘れたんだから当然だよ」




靴を脱いで家に上がる。

ふと気がつくと、照史の部屋には小瀧さんの香りで溢れていた。




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作者名:ash | 作成日時:2019年3月7日 23時

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