ハートの弓矢は奥深く ２

Merry Christmas ページ23

.




.





「A」

「あ、」





携帯の画面から目を離し、視線をあげると私に小さく手を振りながらこっちに歩いてくる先輩の姿が見えた





「ごめん、待った？」

「ううん全然」

「よかった、じゃあ行こか、車あっち止めたから」

「うん」






12月25日 11:30

まだ自分の車を持っていない先輩は、レンタカーを借りて家まで私を迎えに来てくれた。





.





「はい」

「あ、ありがと」





先輩は何食わぬ顔で助手席の扉を開けてくれた。

私が座ったことを確認すると扉を閉め、車の前方を通って運転席の扉を開いた。

その間に私はドキドキしながらシートベルトを締める。





「ん？」





何かに気づいた様子で、運転席に座ったまま少しだけ私の方に身を乗り出す先輩。





「どうしたの？」

「いい香りする、今日香水つけたん？」





あー、ほんと好き。





「あ、うん」

「やっぱり、うん、めっちゃええ香り」

「良かった〜、先輩が嫌いな香りだったらどうしようって思ってたw」

「ううん、俺も好き」




.




そう言うと、近寄ったままジッと見つめてくる先輩




.




「先輩？」




近い距離でジッと見つめ合うのは恥ずかしくてもうそろそろ視線を外したい




「もうええか」

「え？」





何がもう良いんだろう





「淳太でええよ、ていうかAに呼ばれるなら淳太がええな」




.





『Aに呼ばれるなら淳太がええな』





なんて、私の心に確実にハートの矢を刺してくる先輩


もう刺さりすぎて刺さる所がないというか、もう血だらけなんじゃないかと思う。






「Aの先輩呼びも好きやけど、やっぱ淳太がええ」






言うてみ？、なんてちょっと首をかしげるせんぱ……






「じゅ、んた」






顔を両手で隠して俯く私


満足気な顔をして『おし、出発するで』、とエンジンをかけハンドルを握った先輩の耳は真っ赤に染まっていた。





.






.

.→←プレゼント選びって難しくて、楽しい

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す