序幕 ページ6
「……じょー…だん、だから。」
「冗談、ですか」
「…うん。」
頼むから何も勘繰らないで。WBCのマウンドでも、心臓がこんなにうるさいことはなかった。
「本気だったらいいのにって思ってます。俺。」
「ぇ、」
理解の追いつかない返答をした山本。真面目な顔で見つめられては、鶴見はたじろいだ。選択を間違えるな。山本だって冗談に冗談で返してきただけだ。関係を壊さないために、この先も山本といるために、何が最善か。マウンドの上ではよく回るこの脳みそも、今は全く使い物にならなかった。
「だ、だから冗談だって。」
「…じゃあ、」
山本は鶴見ににじり寄り、4歩ほど後退りした鶴見の背中が壁についたところで、立ち止まった。先ほどまで繕っていた鶴見の笑顔は跡形もなく崩れ去り、今は山本の目を見ることさえできない。鶴見は告白の場に人気のない用具庫を選んだ過去の自分を恨んでいた。とはいえ、人気のあるところでの告白なんてアホのすることで、そうとなれば、そもそも告白をしようとした自分が恨めしいのだった。
「じゃあ、Aさんのは冗談でいいです。」
「……はい、」
息が当たるほど近くで話されれば、緊張で息が上がった。その緊張を知ってか知らずか、山本は強く握られている鶴見の手を取って続けた。
「でも俺のは本気です。告白されたと思って舞い上がってつい言っちゃいましたけど、本気です。」
カラカラに渇いた口からありもしない唾を飲み込む。ざり、と砂っぽい音がまた一歩距離が近づいたことを知らせた。
「嫌なら突き飛ばしてください。」
「っ、」
そう言うと、山本は鶴見の背中に手を回した。こいつは冗談なんかじゃないとわかって言っているのだ。本当に意地が悪い、と鶴見は内心で悪態をついた。エースピッチャーを突き飛ばせるわけがない。 怪我でもさせたら山本の人生を潰しかねないのだから。それ以前に、鶴見には山本を突き飛ばす理由が一つしか見当たらなかった。世間の目。山本を引き込んでいいのかと思慮し、少しだけ肩を押すなんて抵抗とも言えない抵抗をするが、首元に埋められた顔から吐かれた熱い息に、最終的には欲に負けて背中に手を回した。どちらからともなく背中に回した腕に力を込める。山本は鶴見に悟られないように大きく息を吐くが、それに気づかない鶴見は結末がなんにせよ、これからも山本と笑い合えると言う事実に安心し、山本の心臓が大きく脈打つのを感じていた。
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フジ(プロフ) - もぴさん» ありがとうございます！何度も読んでいただけているの、とっても嬉しいです！！！繁忙期とストック不足が重なって少しずつの更新になってしまいますが、完結目指して頑張りますのでこれからもよろしくお願いします！ (11月13日 19時) (
レス) id: 81470cd1e1 (このIDを非表示/違反報告)
フジ(プロフ) - 天翔＊さん» 2人の気持ちが再会できてよかったです笑 これからも天翔＊さんの展開を想像しながら気長にお待ちいただけたら嬉しいです！ (11月13日 19時) (レス) id: 81470cd1e1 (このIDを非表示/違反報告)
もぴ(プロフ) - 何度も読み返している大好きなお話です！この先の更新も楽しみにしています！ (11月9日 20時) (レス) id: 14fd480e3d (このIDを非表示/違反報告)
天翔＊(プロフ) - もう本当にこの展開を待ってました。最高すぎます… (11月8日 19時) (レス) @page30 id: 0e0fd021ce (このIDを非表示/違反報告)
フジ(プロフ) - 大津さん» ありがとうございます！もう最後までストーリーは決まっているのですが、期待に応えられるような展開になっているかドキドキです笑 これからもよろしくお願いしますー！ (10月29日 22時) (レス) id: 81470cd1e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：pH | 作成日時：2023年9月19日 18時
